金沢かなざわ)” の例文
旧字:金澤
とうとう、半蔵らの旅は深い藍色あいいろの海の見えるところまで行った。神奈川かながわから金沢かなざわへと進んで、横須賀行きの船の出る港まで行った。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
天保十三年壬寅じんいんの年枕山は二十五になった。正月の始めには江戸に還って、大沢順軒と相携えて杉田すぎたの梅林を訪い金沢かなざわに遊んだ。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
なまじっか昔金沢かなざわで中村皓さんの『名墨墨色図鑑』などを見せてもらって、その印象が残っているだけに厄介である。
南画を描く話 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
能州のうしゅう末森城すえもりじょうは、敵の七尾ななお金沢かなざわをむすぶ街道第一の要害。——津幡つばた鳥越とりごえなどの小城を幾つ踏みつぶすよりも、そこ一つの方が、はるかにまさるぞ。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
はい、あの死骸は手前の娘が、片附かたづいた男でございます。が、都のものではございません。若狭わかさ国府こくふの侍でございます。名は金沢かなざわの武弘、年は二十六歳でございました。
藪の中 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
次に静岡しずおか、次に浜松はままつ、それからさらに大阪おおさか神戸こうべ京都きょうと金沢かなざわ長野ながのとまわって、最後さいご甲府市こうふしへ来たときは、秋もぎ、冬もし、春も通りぬけて、ふたたび夏が来ていました。
曲馬団の「トッテンカン」 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
金沢かなざわは前田氏百万石の城下町で、兼六公園けんろくこうえんで誰も親しんでいるところであります。ここはまた能狂言と茶の湯の町と呼んでもよいかと思います。それほど人々にたしなまれているのであります。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
「冗談言っちゃいけない。金沢かなざわだよ。百まんごくだ」
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
武州金沢かなざわ、金沢園。
五百五十句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
「自身、山越えの間道より、加賀かがに攻め入り、能登のとを抑え、続いて、一挙に敵府てきふ金沢かなざわを踏みつぶして見せん」
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
金沢かなざわの高等学校には入ってからは、夕方の散歩に陳列棚をのぞきこむ位のものだった。九谷窯元と書いた看板が、軒並のきなみに並んでいたが、皆寺井でつくったものばかりだった。
九谷焼 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
誰かと思つてのぞきこんで見たら、金沢かなざわにゐる室生犀星むろふさいせい
続野人生計事 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)