酒顛童子しゅてんどうじ)” の例文
また他の方面で最も自分の周囲の人々を愉快がらせたのは、かの大江山おおえやまの「酒顛童子しゅてんどうじ」が「恐ろしき悪魔」と訳されたりするのであった。
……そうしてまるで酒顛童子しゅてんどうじのような、恐ろしいお爺さんがいたはずだが。……思い出せない、思い出せない。……
剣侠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
酒顛童子しゅてんどうじにせよ、鈴鹿山すずかやまの鬼にせよ、悪路王・大竹丸・赤頭にせよいずれも武力の討伐を必要としております。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
道場の一郭は、源三郎が引きつれてきた伊賀の若侍に占領されて、そこでは日夜、大江山の酒顛童子しゅてんどうじがひっ越して来たような、割れるがごとき物騒がしい生活。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「播磨。かような童に、この大盃をやってくれとは、いかなる訳か。よも酒顛童子しゅてんどうじの伜ではなかろうに」
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一寸法師いっすんぼうしの話に出てくる鬼も一身の危険を顧みず、物詣ものもうでの姫君に見とれていたらしい。なるほど大江山おおえやま酒顛童子しゅてんどうじ羅生門らしょうもん茨木童子いばらぎどうじ稀代きだいの悪人のように思われている。
桃太郎 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
小袖幕で囲ったようなおんなの中から、かっ真赤まっかな顔をして、せた酒顛童子しゅてんどうじという、三分刈りの頭で、頬骨の張った、目のぎょろりとした、なぜか額の暗い、殺気立った男が、詰襟の紺の洋服で
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
大江山の酒顛童子しゅてんどうじほどの勢いで、大原稿を書いていた。
胡堂百話 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
大江山おおえやま酒顛童子しゅてんどうじ。」
鬼六 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
また大江山おおえやま酒顛童子しゅてんどうじの話とよく似た話がシナにもあるそうであるが、またこの話はユリシースのサイクロップス退治の話とよほど似たところがある。
化け物の進化 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
まれには歯が生えて産れるほどの異相の子をもうけると、たいていは動顛どうてんして即座にこれを殺し、これによって酒顛童子しゅてんどうじ茨木童子いばらきどうじの如き悪業の根を絶った代りには
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
酒顛童子しゅてんどうじのようなやつを亭主にしたというのなら、そりゃあきらめもつきますまいが、城下はずれの小粋な寮へ納まって、お化粧料けしょうりょうもタップリなら、遊山ゆさんやぜいたくもしたい三昧ざんまい
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「……もし、枕を、枕を」お吉は、酒顛童子しゅてんどうじのようになって寝入った良人を、怖々こわごわとのぞいて、そっと、その顔を木枕へのせてやり、足の上へよるものをかけて、ほっと自分にかえった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
例えば在原業平ありわらのなりひら悠遊ゆうゆうしていたころには、おに一口ひとくちいてんけりといったが、大江山の酒顛童子しゅてんどうじに至っては、都に出でて多くの美女を捕え来りしゃくをさせて酒を飲むような習癖があったもののごとく
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)