遁甲とんこう)” の例文
これは兵法へいほうでいう八もん遁甲とんこう諸葛孔明しょかつこうめい司馬仲達しばちゅうたつをおとし入れたじゅつでもある。秀吉、それをこころみて、滝川一益たきがわかずますをなぶったのだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
南蛮渡来の法術を使い遁甲とんこう隠形おんぎょう飛行ひぎょう自在、まだ弱冠の身でありながら、すで総帥そうすいの器を有し、数年前より御嶽山おんたけさん上にとりでを設けて武威を張る御嶽冠者みたけかじゃと申すお方!
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
く二葉亭は八門遁甲とんこうというような何処どこから切込んでも切崩きりくずす事の出来ない論陣を張って、時々奇兵を放っては対手あいてらしたり悩ましたりする擒縦きんしょう殺活自在の思弁にすこぶる長じていた。
二葉亭余談 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
要するに、彼の持した所は、その生活までが、いわゆる八もん遁甲とんこうであって、どこにも隙がなかった。つまり凡人を安息させる開放がないのである。
三国志:12 篇外余録 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「この前の例もあります。孔明は八門遁甲とんこうの法を得て、六ちょうこうしんをつかいます。或いは、天象に奇変を現わすことだってできない限りもありません」
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
察するにこれは、孔明のよくなす八もん遁甲とんこうの一法、六甲天書りっこうてんしょのうちにいう縮地しゅくちの法を用いたものであろう。悪くすると冥闇めいあん必殺の危地へ誘いこまれ、全滅の憂き目にあうやも測り難い。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼の兵略戦法を語るに、六ちょうこうの術を附し、八門遁甲とんこうの鬼変を描写しているくだりなどはみなそうであるし、わけて天文気象に関わることは、みな中国の陰陽いんようぎょう星暦せいれきに拠ったものである。
三国志:12 篇外余録 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
で、生き残って帰る魏将士の間には、誰いうとなく、「これは孔明が、八門遁甲とんこうの法を用いて、われらを黒霧のうちに誘い、また後には、六ちょうこうの神通力を以て、黒霧をはらい除いたせいである」
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)