追駆おつか)” の例文
だけど私、過日こなひだでモウ皆に笑はれて、懲々こりごりしてるんですもの。ぢやけて下さいつて、欺して逃げて来たもんだから、野村さんに追駆おつかけられたのよ。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
をとこは、をんなたましひ時鳥ほとゝぎすつたゆめて、しろ毛布けつとつゝんでらうと血眼ちまなこ追駆おつかまはさう……寐惚面ねぼけづらるやうだ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
『莫迦な。』目賀田はそれを追駆おつかけるやうに又手を挙げた。『貴方あんたぢやあるまいし。……若しや袂に入れたかと思つて袂を探したが、袂にもない。——』
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
四辺あたり憚からぬ澄んだ声が響いて、色せた紫の袴をなびかせ乍ら、一人の女が急足いそぎあし追駆おつかけて来た。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
智恵子は一歩ひとあし毎に顔が益々上気のぼせて来る様に感じた。何がなしに、吉野と昌作が背後うしろから急足いそぎあし追駆おつかけて来る様な気がする。それが、一歩ひとあし々々に近づいて来る……………
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
川底の石は滑かに、流ははやい。岸の智恵子がにはかの驚きに女児こどもらの泣騒ぐも構はずハラ/\してるうちに、吉野は危き足を踏しめて十二三間も夜川の瀬を追駆おつかけた。波がザブ/\と腰を洗つた。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)