追憶おもひで)” の例文
あきらかに見、明に考へることが出来るやうに成つた。眼前めのまへひろがる郊外の景色を眺めると、種々さま/″\追憶おもひでは丑松の胸の中を往つたり来たりする。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
数限りなき追憶おもひでが口々に語られた。気軽な連中は、階下の客の迷惑も心づかず、その一人が弾くヴアイオリンの音に伴れてダンスを始めた。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
はた「智慧さへ、追憶おもひでさへ、深き悲みにはもとむるところなし、たゞ一事の学びえて忘られぬあるのみ、この野の小草こそは一茎三花を着けたれ。」
抒情詩に就て (新字旧仮名) / 蒲原有明(著)
古いけれども棄てがたい、その完成した美くしい形は東洋人の二千年来の悲哀のさまざまな追憶おもひでに依てたとへがたない悲しい光沢をつけられてゐる。
桐の花 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
おお幼年の時から青春まで幾つのわたしの絶望、荒い心の傷、あの黒い吐血の追憶おもひで
展望 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
馬鹿らしい後悔や追憶おもひでを必要とせずに生きて行く。
南洋館 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
わくをはめたる追憶おもひでの、そこはかとなく留まれる
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
しかたの追憶おもひでし。
あはれ今 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
美しき追憶おもひでばかり
玉盃の曲 (新字旧仮名) / 漢那浪笛(著)
追憶おもひでの林檎畠——昔若木であつたのも今は太い幹となつて、中には僅かに性命いのちを保つて居るやうな虫ばみ朽ちたのもある。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
古いけれども棄てがたい、その完成した美くしい形は東洋人の二千年来の悲哀のさまざまな追憶おもひでに依てたとへがたない悲しい光沢をつけられてゐる。
桐の花とカステラ (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
稚い時からの恋の最後をはりを、其時、二人は人知れず語つたのだ。……此追憶おもひでは、流石に信吾の心をかろくはしない。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
わくをはめたる追憶おもひでの、そこはかとなく留まれる
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
へうおせしにも似る追憶おもひでもて
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
楽しい過去の追憶おもひでは今の悲傷かなしみを二重にして感じさせる。『あゝ、あゝ、奈何どうして俺は斯様こんな猜疑深うたがひぶかくなつたらう。』
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
亡き母!……智恵子の身にも悲しき追憶おもひではある。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
今行くは追憶おもひでの影——黄金なす幻追ひて
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
追憶おもひでの遠き昔のみ空より
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
そのかみのをさ追憶おもひで——君知るや
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
いかがくゆらむ、追憶おもひでに。
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
あかあかといろわかき追憶おもひでの空。
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
追憶おもひでつらきかたみなる
草わかば (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
春うらわかき追憶おもひで
草わかば (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
とこうるはしき追憶おもひで
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
すさめる胸の追憶おもひで
草わかば (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
壁のおも、わが追憶おもひで
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)