辿着たどりつ)” の例文
気絶した母を抱いたまま泥濘ぬかるみに何度も足を取られながら、ただ死力を尽して走りに走った敦夫は、ようやくの事で村田の家へ辿着たどりつくと
殺生谷の鬼火 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
一間ばかりの所を一朝かかって居去いざって、もとの処へかろうじて辿着たどりつきは着いたが、さて新鮮の空気を呼吸し得たは束の間
やっ茶店ちゃや辿着たどりつくと、其の駕籠は軒下のきしたに建つて居たが、沢の腰を掛けた時、白い毛布けっとに包まつた病人らしいおとこを乗せたが、ゆらりとあがつて、すた/\行く……
貴婦人 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
宮は鳩羽鼠はとばねずみ頭巾ずきんかぶりて、濃浅黄地こいあさぎぢに白く中形ちゆうがた模様ある毛織のシォールをまとひ、学生は焦茶の外套オバコオトを着たるが、身をすぼめて吹来るこがらし遣過やりすごしつつ、遅れし宮の辿着たどりつくを待ちて言出せり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
途次みちすがらきこえた鬼門關きもんくわんぎようとして、不案内ふあんないみち踏迷ふみまよつて、やつ辿着たどりついたのが古廟こべうで、べろんとひたひ禿げた大王だいわうが、正面しやうめんくちくわつけてござる、うらたゞひと
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)