軽舸はしけ)” の例文
旧字:輕舸
龍巻たつまきは、雲井くもいへかけり去ったわしの行方などには目もくれず、すぐ手下に軽舸はしけをおろさせて、波間にただよっている伊那丸を、親船へ引きあげさせた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それから間もなく、利助とガラッ八は、子分の者に軽舸はしけがせて、大川の右左を、かみからしもへ、下から上へと見廻り始めたことは言うまでもありません。
まもなく、軽舸はしけの用意ができると、病人どうような伊那丸を、それへうつして、まえの三人もともに乗りこみ、すぐ鼻先はなさきの小島へむかってこぎだした。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それから間もなく、利助とガラッ八は、子分の者に軽舸はしけがせて、大川の右左を、かみからしもへ、下から上へと見廻り始めたことは言うまでもありません。
実はあれから、ややしばし、同藩の人々と共に、便船から上がって来る武蔵の軽舸はしけを待っていたところ、いつになっても、沙汰もなし、軽舸はしけも来ない。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
軽舸はしけで擦れ違ったのは八五郎でした。河へ飛込んだ親分の身を案じて、西両国の橋番所に駆け付けると、船を出して貰って現場げんじょう——橋の下——へ漕がせたのです。
そのとき二、三の軽舸はしけは沈没されたが、泳ぎ帰って、ふたたびこの中で指揮している者もあり、何しろ農民までが、今は兵にも劣らない決死のすがたを持っていた。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
滑り落ちたと思うと、下に軽舸はしけが用意してあって、飛乗ると今度は下手しもての方へいで行きましたよ
あしの深みに隠されて、とまをかぶった一そう軽舸はしけがある。ザワザワと掻き分けてきた弦之丞、苫をはねのけてそれへび移り、早くも砂を崩して川底から離れだした。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「伊三兄哥は、両国から出せ。俺と石原の兄哥は、竹町たけちょうから出して逆に行く。——あかりの点いている船に用事はねえ、大きな船も調べるだけ無駄だ、灯の無い軽舸はしけでそっと漕いでいるのがあったら逃がすな」
べつに、支度といって、何もございませんが、たくさんな軽舸はしけの中から、脚のはやい、そしてよごれのないのをって、すっかり塩をいて、船板まで洗って置きました。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そっとおろしたのは、軽舸はしけの中。
「やい野郎ども、はやくこの黄金を軽舸はしけへ運んでいけ。どりゃ、用がすんだら引きあげようか」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
との事にむなく引き返して来ると、その軽舸はしけが浜へ戻って報告している間に、太郎左衛門船はふたたび帆を張り、今、飾磨しかまの浦から立ったばかり——というのであった。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
摂津せっつ花隈はなくま城陥落の日、この船手勢は、思いもうけぬ海上から霧を払ってあらわれ、艨艟もうどう数十そうを浜にならべて軽舸はしけを下ろし、たちまち川口からさかのぼって各所へ陸戦隊を上げ
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
西曲輪にしぐるわ東曲輪ひがしぐるわとの往来さえ舟やいかだでするほどだった。城兵は、染戸そめどの染板数百枚をあつめて、軽舸はしけを作った。水上戦のとき、それに載って寄手の大船へ攻めかかった勇者もある。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と——安治川の中ほどには、弦之丞の軽舸はしけが、ギッギッとこっちへ向っている。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)