起伏おきふし)” の例文
深草の里に老婆が物語、聞けば他事ひとごとならず、いつしか身に振りかゝる哀の露、泡沫夢幻はうまつむげんと悟りても、今更ら驚かれぬる世の起伏おきふしかな。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
懶怠なまけた身の起伏おきふしに何といふこともなく眺めやる昼の男の心持、また逃げてゆく「時」のうしろでをも恍惚うつとりと空に凝視みつむる心持……
桐の花 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
E——のことを或る偶然の機会で知つて以来、純吉は自家うち起伏おきふしするのが若しかつた。父親の顔を見るのも苦々しかつた。母親と言葉を交すのも退儀だつた。
明るく・暗く (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
かばかりの炎𤍠はだ知らぬ身なりしかなと、日もよるも苦しみ続けさふらふ程は、この航海よ、わが想像のほかなりし世界を歩むよと憎く、甲板かふばんでて浪の起伏おきふしを見さふらふことも悲しく
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
いふまでもなく極月しはすかけて三月さんぐわつ彼岸ひがんゆきどけまでは、毎年まいねんこんななか起伏おきふしするから、ゆきおどろくやうなものわすれても土地柄とちがらながら、今年ことし意外いぐわいはやうへに、今時いまどきくまでつもるべしとは
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
子の蹴りすてた小夜着は、幮の裾に波の起伏おきふしを、真似て真似そこねる。
独楽 (新字旧仮名) / 高祖保(著)
「博士、貴方は今までどこに起伏おきふししていらっしゃったのですか」
怪塔王 (新字新仮名) / 海野十三(著)
けものらのおも起伏おきふし
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)