赤羽あかばね)” の例文
殊に三月の末であったか、碧梧桐一家の人が赤羽あかばね土筆つくし取りに行くので、妹も一所に行くことになった時には予まで嬉しい心持がした。
病牀苦語 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
この処は、北は川口町かわぐちまち、南は赤羽あかばねの町が近いので、橋上には自転車と自動車の往復が烈しく、わたくしの散策には適していない。
放水路 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
飯田町の狭い路地から貧しい葬儀とむらいが出た日の翌日の朝の事である。新宿赤羽あかばね間の鉄道線路に一人の轢死者れきししゃが見つかった。
窮死 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
狐が軍人に化けて火薬庫の衛兵を脅かそうとしたというのである。赤羽あかばねや宇治の火薬庫事件が頭に残っている際であるから、私は一種の興味を以てその話をいた。
二階から (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「恐ろしいものですよ。例えば、あなたの級の赤羽あかばねさんですね。あゝいう人はとても駄目です」
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
しかしとにかく一度ゴルフ場へお伴をして見学だけさせてもらおうということになって、今年の六月末のある水曜日の午前に二人で駒込こまごめから円タクを拾って赤羽あかばねのリンクへ出かけた。
ゴルフ随行記 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
すると八時五十五分に赤羽あかばね行きの汽車が発車します報鈴しらせがありますから
「いや赤羽あかばねまで校長と同車する計画だ」
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
ば後になし歸ると聞しとらもんも歸らぬ旅にゆくそらの西の久保より赤羽あかばねの川は三としらかべ有馬ありま長家も打過て六堂ならねどふだつじ脇目わきめふらず急ぎしか此程高輪たかなわよりの出火にて愛宕下通りあたらし橋邊まで一圓に燒原やけはらとなり四邊あたり曠々くわう/\として物凄ものすごく雨は次第に降募ふりつのり目先も知ぬしんやみ漸々やう/\にして歩行あゆみける折しもひゞかね
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
赤羽あかばねで今電気をたくところをこさえているが、それができるとはや……」
写生紀行 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)