贋物がんぶつ)” の例文
三円で果亭くわてい山水さんすゐを買つて来て、書斎のとこに掛けて置いたら、遊びに来た男が皆その前へ立つて見ちや「贋物がんぶつぢやないか」と軽蔑した。
鑑定 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
いつ贋物がんぶつで辛抱したら、格安に出来上るだらうと、懸額かけがくから、軸物、屏風、とこの置物まで悉皆すつかり贋物がんぶつで取揃へて、書斎の名まで贋物堂がんぶつだうと名づけて納まつてゐた。
贋物 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
シェストフを贋物がんぶつの一言で言い切り、構光利一を駑馬どばの二字で片づけ、懐疑説の矛盾をわずか数語でもって指摘し去り、ジッドの小説は二流也と一刀のもとにほふ
自分なぞも資産家でさえあればきっとすばらしい贋物がんぶつや贋筆を買込かいこんで大ニコニコであるに疑いない。
骨董 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
贋物がんぶつや疑物ということは、折々耳にしないこともないのですが、それが案外多いらしい様子です。全然まるっきりの私の贋物もありますが、一とう多いらしいのは直し物です。
迷彩 (新字新仮名) / 上村松園(著)
しかし交山、柴田是真等に示すに、その大半は贋物がんぶつであった。香以は憤って更に現存の画家三十六人を選んで鯉を画かせた。そして十一月に永機を招いて鯉の聯句を興行した。
細木香以 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
練物ねりもので作ったのへ指先のもんを押しつけたりして、時々うまくごまかした贋物がんぶつがあるが、それは手障てざわりがどこかざらざらするから、本当の古渡こわたりとはすぐ区別できるなどと叮嚀ていねいに女に教えていた。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ところで、にせ物というものは、黙っていれば、それで通る場合が多いのですが、ほん物でないだけに気がとがめるせいか、とかくこの贋物がんぶつにかぎって、いろいろと口が多い。よけいな言葉を吐く。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
けれどもこの山水を贋物がんぶつだと称する諸君子くんしは、ことごとくこれを自分の負惜まけをしみだと盲断した。のみならず彼等の或者は「かく無名の天才は安上やすあがりでいよ」
鑑定 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
いつ贋物がんぶつで辛抱したら、格安に出来上るだらうと、懸額かけがくから、軸物、屏風、とこの置物まで悉皆すつかり贋物がんぶつで取揃へて、書斎の名まで贋物堂がんぶつだうと名づけて納まつてゐた。
自分なぞも資産家でさへあれば屹度すばらしい贋物がんぶつや贋筆を買込で大ニコ/\であるに疑ひ無い。
骨董 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
現にこのあひだなんとか云ふ男の作つた贋物がんぶつの書画は、作者自身も真贋をべんじなかつたと云つてゐるぢやないか。
鑑定 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
面白いのは、そこの主人が軸物よりも屏風よりも、もつとひど贋物がんぶつである事だ。——京都の画家ゑかき贋物いかものこさへる事がうまいやうに、京都の女は贋物いかものを産む事が上手だ。いづれにしても立派な腕前である。
贋物 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
もとより同人の同作、いつわり、贋物がんぶつを現わすということでは無い。
鵞鳥 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
面白いのは、そこの主人が軸物よりも屏風よりも、もつとひど贋物がんぶつである事だ。——京都の画家ゑかき贋物いかものこさへる事がうまいやうに、京都の女は贋物いかものを産む事が上手だ。いづれにしても立派な腕前である。