たす)” の例文
もっとも些少さしょう東西ものなれども、こたびの路用をたすくるのみ。わがわたくし餞別はなむけならず、里見殿さとみどのたまものなるに、いろわで納め給えと言う。
海のほとり (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
むかし、あるところに老婆がありましたが、一人の禅僧に庵を建ててやり、衣食を送って修業をたすけておりました。二十年間それを続けました。
仏教人生読本 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
もし、形すなわちこれ神、神すなわちこれ形にして、二者相たすけて理として偏謝することなければ、すなわち神ほろぶるの日、形もまたまさに消ゆべし。
通俗講義 霊魂不滅論 (新字新仮名) / 井上円了(著)
ところが一年たたぬうちに父は病死して、母と二人暮しとなり、差し当り食うには困りませんでしたが、私はタイピストとなって生活のたすけと致してりました。
好色破邪顕正 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
以前この二村の娘年頃になると皆特種の勤めを稼ぎ父兄をたすけ、遠近これをたたえて善くその勤めを成した娘を争いめとったが、維新以後その俗すたれ家のみ昔の構造のまま残るといった。
それであって給料はたった八円、しかし私の家計にはこれでも大分のたすけになった。
鳴雪自叙伝 (新字新仮名) / 内藤鳴雪(著)
実に心細き時勢なれば売弘うりひろめなどは出来ざるものと覚悟して出版然るべし、その費用の如きは迂老が斯道しどうの為め又先人へ報恩の為めにたすくべしとて、持参したる数円金を出し懇談に及びしかば
蘭学事始再版之序 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
かれ十二分の標緻きりょうなしといえども持操貞確、つくえを挙げて眉にひとしくした孟氏のむすめ、髪を売って夫をたすけた明智あけちの室、筆を携えて渡しに走った大雅堂の妻もこのようであったかと思わるる。
其費用の如きは迂老が斯道しどうの為め又先人へ報恩の為めにたすく可しとて、持参したる数円金を出し懇談に及びしかば、主人も迂老の志をよろこびいよ/\上木と決し、其頃はもとより活版とてはなく
蘭学事始再版序 (新字旧仮名) / 福沢諭吉(著)