貸借かしかり)” の例文
夫人との間には、何の貸借かしかりもないが、準之助氏に対しては、そうは行かなかった。姉のために、あんな大金を借りたばかりである。
貞操問答 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
遊佐は気が小いからかない。ああ云ふ風だからますま脚下あしもとを見られて好い事を為れるのだ。高が金銭かね貸借かしかりだ、命に別条は有りはしないさ
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
……境さん、貸借かしかりも、もとは味方、勘定は勘定、ものは相談、あなたとはお馴染なじみじゃありませんか。似合ったよ、恐れ入ったよ、ものになってる、容子ようすがね。
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
頭髪あたまのものや持物などを、惜気もなげにくれてもらったりしていた妹は、帯や下駄や時々の小遣いの貸借かしかりにも、彼女を警戒しなければならないことに気がついた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「あたしがいるだけ下さることになっているんです。私どもは貸借かしかりの勘定があるんです」
たとへば日雇賃ひようちんにても借家賃しやくやちんにても其外そのほかもの貸借かしかり約束やくそく日限にちげんみないづれも一ウヰークにつき何程なにほどとて、一七日毎ひとなぬかごときりつくること、我邦わがくににて毎月まいつき晦日みそかかぎりにするがごとし。その一七日のとなへごと
改暦弁 (旧字旧仮名) / 福沢諭吉(著)
このばあい、貸借かしかりなんて問題もんだいのありようはずがないさ。ほかのにんげんどうよう、きみは自由だよ。きみの幸運こううんにたいして、わたしはひじょうに、よろこんでいる。きゅうゆう、まあ、かけたまえ。
ソコデ私は前申す通り新銭座の塾を立てると同時にきわめて簡単な塾則をこしらえて、塾中金の貸借かしかり一切いっさい相成らぬ、寝るときは寝て、起るときは起き、うときにはさだめの時間に食堂に出る
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
自分に手を着けて売買ばいばい貸借かしかりは何分ウルサクて面倒臭くてる気がない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)