貨物しろもの)” の例文
そしてささやいた。「おれは盗んだのだ。何百万と云う貨物しろものを盗んだ。おれはミリオネエルだ。そのくせかつえ死ななくてはならないのだ。」
橋の下 (新字新仮名) / フレデリック・ブウテ(著)
アマルフイイの市はつゝめる貨物しろものをみだりに堆積したるさまをなせり。羅馬なる猶太街ゲツトオの狹きも、これに比べては尚通衢つうく大路おほぢと稱するに足るならん。
殊に高価たかね貨物しろものを提げてるという事をチラリと聞いたから、間が宜くば暗い処へ引摺込み、残らず引ッぱごうという護摩の灰の二人で、誠に悪い奴でございます。
今椅子に掛けている貨物しろものは、潜水器械というものを身に装った人間に似ていて、すこぶる人間離れのした恰好の物である。怪しく動かない物である。言わば内容のない外被である。
軟派は二階をあてにして行く。二階には必ず女がいた。その頃の書生には、こういう湯屋の女と夫婦約束をした人もあった。下宿屋の娘なんぞよりは、無論一層下った貨物しろものなのである。
ヰタ・セクスアリス (新字新仮名) / 森鴎外(著)
歩いて還ることの出来ない貨物しろものなので、やむを得ず、氷のやうな泥の中に、乗り込んで、還ツたことあるですが、既に釣を以て楽しまうとする上は、此の位の辛抱は、何とも思はんです。
元日の釣 (新字旧仮名) / 石井研堂(著)
くらふの勢ひありとか寶澤は心中に偖々さて/\ばゝめがよき貨物しろものを持て居ることよ此二品を手に入て我こそ天下の落胤らくいん名乘なのつて出なば分地でもぐらゐ萬一もし極運きやくうんかなふ時はとやつと當年十一のこゝ惡念あくねん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
売られて、貿易の貨物しろものにせられた奴等奴。
魚蝋ぎよらふの烟を風のまにまに吹きなびかせて、前に木机を据ゑ、そが上に月桂ラウレオの青枝もて編みたる籠に貨物しろものを載せたるを飾りたるは、肉ひさぐ男、くだもの賣る女などなり。
世界中捜しても見附からないはずだ。乞食の靴の中に這入っている。誰にだって分からなかろう。誰にだってなあ。ははは。何百万と云う貨物しろものが靴の中にあるのだ。
橋の下 (新字新仮名) / フレデリック・ブウテ(著)
値を好く買いそうな貨物しろものだ。
わが初の作のたねになりしは、向ひなる枯肉鋪ひものみせなりしこそ可笑をかしけれ。此家の貨物しろものならべ方は、旅人の目にさへ留まるやうなりければ、早くも我空想を襲ひしなり。
もう貨物しろものに見とれている。