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見苦
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みぐるし
子を生みし後も宮が色香はつゆ
移はずして、
自ら
可悩き
風情の
添りたるに、
夫が愛護の念は
益深く、
寵は人目の
見苦きばかり
弥よ
加るのみ。
突へ申けるは徳川と
名乘せ給ふには
定めて
仔細ある御方なるべし
某事は信濃國
諏訪の者にて
遠州屋彌次六と申し
鵞湖散人また
南齋とも名乘候
下諏訪に
旅籠屋渡世仕つれり若も
信州邊へ御下りに成ば
見苦くとも御立寄あるべし御宿仕らんと云にぞ寶澤は
打點頭扨は
今日まで
懕々致候て、唯々
懐き
御方の事のみ
思続け
候ては、みづからの
儚き儚き身の上を
慨き、胸は
愈よ痛み、目は
見苦く
腫起り候て、今日は
昨日より
痩衰へ
申候。
生きたる心地もせずして宮の
慙ぢ
慄ける
傍に、車夫は
見苦からぬ一台の
辻車を伴ひ
来れり。
漸く
面を
挙れば、いつ又寄りしとも知らぬ
人立を、
可忌くも巡査の怪みて
近くなり。