襟上えりがみ)” の例文
ねえさん待ちな」と突然いきなり武士さむらいうしろから襟上えりがみつかむから「あれー」と云ううちに足首を取って無理に藪蔭やぶかげかつぎ込み「ひッひッ」というをひっ□し
ところがまだ囲いの障子しょうじに、火影ほかげがさしていましたから、そっとそこをうかがおうとすると、いきなり誰か言葉もかけず、わたしの襟上えりがみとらえたものがあります。
報恩記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
と、何者かに襟上えりがみを取られて引き立てられでもしたかのように白虎太郎は飛び上がった。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ぱらり持っていた刃物を落し、是はと取ろうとする所を襟上えりがみを取って膝の下へ引摺寄せる、山之助は此所こゝぞと切込みましたが、此方こちらは何分手ぶらで居った所
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
老婆の話が完ると、下人はあざけるやうな聲でねんを押した。さうして、一あしまへへ出ると、不意ふいに、右の手を面皰から離して、老婆の襟上えりがみをつかみながら、かう云つた。
羅生門 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
太郎は、すばやく猿臂えんびをのべて、浅黄の水干すいかん襟上えりがみをつかみながら、相手をそこへ引き倒した。
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
太郎もまたその刹那せつな猿臂えんびをのばし、弟の襟上えりがみをつかみながら、必死になって引きずり上げる。
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
老婆の話がおわると、下人はあざけるような声で念を押した。そうして、一足前へ出ると、不意に右の手を面皰にきびから離して、老婆の襟上えりがみをつかみながら、噛みつくようにこう云った。
羅生門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
二言三言云ひ合ふ中に、兄はわたしの襟上えりがみつかむと、いきなり其処へ引き倒しました。
(新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)