褐色かちいろ)” の例文
サモワルはいつものやうに、綺麗に手入れがしてあつて、卓に被つてあるきれも雪のやうに白い。パンは柔かさうに褐色かちいろに焼けてゐて、薫が好い。
板ばさみ (新字旧仮名) / オイゲン・チリコフ(著)
髪は日本で昔から好い髪といふ鴉羽色からすばいろで筋の太いのではない。少し褐色かちいろがかつて細く軟いのがたつぷりある。
魔睡 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
膝の上までり開きたる短衣は裂けほころび、ゆるく肩に纏へる外套めきたる褐色かちいろの布は垢つきよごれ、長き黒髮をばうなじに束ね、美しき目よりは恐ろしき光を放てり。
褐色かちいろの着物に黒い帯をして、尻端折しりはしょりをし、出刃をかざした形相ぎょうそうものすごい老婆の姿に、憎しみの眼を投げると共に、その腰にすがっている振袖を着た可憐な乙女に
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
しばらく緑一色であった田は、白っぽい早稲の穂の色になり、畑ではひえが黒く、きびが黄に、粟が褐色かちいろれて来る。粟や黍はもちにしてもまだ食える。稗は乃木さんでなければ中々食えぬ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
黄なる葉と褐色かちいろの葉とちりにけり黄なる銀杏いてふがまれにこまかさ
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
海はあけなれが乳房を褐色かちいろの真珠とはなし
この褐色かちいろの渦巻ける髪を
山羊は二頭づゝの列をなして洞より出で、山の上に登りゆけり。殿しんがりには一人の童子あり。尖りたる帽を紐もて結び、褐色かちいろの短き外套を纏ひ、足には汚れたるくつしたはきて、わらぢくゝり付けたり。
昨日は庭で青白い螟蛉あおむし褐色かちいろのフウ虫二疋でし殺して吸うて居るのを見た。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
黄なる葉と褐色かちいろの葉とちりにけり黄なる銀杏いてふがまれにこまかさ
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
若者、その眼は輝き、その皮膚は褐色かちいろ
褐色かちいろの顔を見せたり。
をちらして網戸にうつ天蛾すずめが肉厚ししあつき胴のくろ褐色かちいろ
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
をちらして網戸にうつ天蛾すずめが肉厚ししあつき胴のくろ褐色かちいろ
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
なよやかなる風は蜜蜂の褐色かちいろ
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
うち湿しめかははこゆる褐色かちいろ
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
湿しめつた褐色かちいろ花粉くわふん
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)