裾捌すそさば)” の例文
ト台所の方を、どうやら嫋娜すらりとした、脊の高い御婦人が、黄昏たそがれに忙しい裾捌すそさばきで通られたような、ものの気勢けはいもございます。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
やっと手を突いて挨拶をする物の云いよう裾捌すそさばき、この娘を飯炊きにと云ってもおのずから頭がさがる。
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
その石橋を渡った時、派手な裾捌すそさばきにちらちらと、かつ散る紅、かくるる黒髪、娘はかどを入ったのである。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
千代ちよという十九の娘がございます、至って親孝行で、器量といい品格といい、物の云いよう裾捌すそさばきなり何うも貧乏人の娘には珍らしい別嬪で、から嫁に貰いたいと云い込んでも
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
中なる三人の婦人等おんなたちは、一様に深張りの涼傘ひがさを指しかざして、裾捌すそさばきの音いとさやかに、するすると練り来たれる、と行き違いざま高峰は、思わず後を見返りたり。
外科室 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ひどく心配して、お品と云いお行儀と云い、裾捌すそさばきと云い何うも抜目の無いお美しい嬢さんだが、どう云う訳で山の中へ来て居ると云うのでね、旦那が大変心配ですが、貴方は東京ですね
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
先達せんだつの女房に、片手、手をかれて登場。姿をしずかに、深く差俯向さしうつむき、面影やややつれたれども、さまで悪怯わるびれざる態度、おもむろに廻廊を進みて、床を上段に昇る。昇る時も、裾捌すそさばしずかなり。
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
江戸の田原町の小市の手から山口屋へ参って話をいたしまして、玉を見せると、品といい器量といい、起居振舞たちいふるまい裾捌すそさばき、物の云いようまで一つも点の打ちどこのない、天然備わった美人で
酔って云うのではないが表向おもてむき、ま手前は小間使こまづかいの奉公に来た時から、器量と云い、物の云いよう裾捌すそさばき、他々ほか/\の奉公人と違い、自然に備わるひんというものは別だ、実に物堅い屋敷にいながら
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)