袋棚ふくろだな)” の例文
古風にさしたり袋棚ふくろだなの戸二三寸明し中より脇差わきざしこじりの見ゆれば吉兵衞は立寄たちよりて見れば鮫鞘さめざやの大脇差なり手に取上とりあげさやを拂て見るに只今人を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
袋棚ふくろだなと障子との片隅かたすみ手炉てあぶりを囲みて、蜜柑みかんきつつかたらふ男の一個ひとりは、彼の横顔を恍惚ほれぼれはるかに見入りたりしが、つひ思堪おもひたへざらんやうにうめいだせり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
上段の間は、おさ欄間らんま棹縁天床さおぶちてんじょう、西面して塗框ぬりがまちの本床と、平書院を並べ、その左に袋棚ふくろだなと地袋の床脇がある。
私は獨り取り殘された。途端とたんに、私は馬車の袋棚ふくろだなの中にしまつておいた荷物を忘れて來たことに氣がついた。それを安全の爲めに袋棚に入れて置いたのだが。
朝起きると、お庄は赤いたすきをかけ、節のところの落ち窪むほどに肉づいた白い手を二の腕まで見せて塗り壁を拭いたり、床の間の見事な卓や、袋棚ふくろだな蒔絵まきえ硯箱すずりばこなどに絹拭巾きぬぶきんをかけたりした。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
木振賤きぶりいやしからぬ二鉢ふたはちの梅の影を帯びて南縁の障子にのぼり尽せる日脚ひざしは、袋棚ふくろだなに据ゑたる福寿草ふくじゆそうの五六輪咲揃さきそろへるはなびらに輝きつつ、更に唯継の身よりは光も出づらんやうに
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
袋棚ふくろだななる置時計は十時十分前を指せり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)