衣服みなり)” の例文
ぼく子供心こどもごころにも此樣子このやうす不審ふしんおもつたといふは、其男そのをとこ衣服みなりから風采ふうさいから擧動きよどうまでが、一見いつけん百姓ひやくしやうです、純然じゆんぜんたる水呑百姓みづのみひやくしやうといふ體裁ていさいです
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
何所いづくより何の用事で見えられた、と衣服みなりの粗末なるにはや侮り軽しめた言葉遣ひ、十兵衞さらに気にもとめず、野生わたくしは大工の十兵衞と申すもの
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
極々下等の衣服みなりでも有ませんから財布か紙入の類は是非持て居たのです(荻)併し夫は君の想像だろう(大)何うして想像では有ません演繹法えんえきほうの推理です
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
そういえばYの衣服みなりが近来著るしく贅沢ぜいたくになって来た。新裁下したておろしのセルの単衣ひとえ大巾縮緬おおはばちりめん兵児帯へこおびをグルグル巻きつけたこの頃のYの服装は玄関番の書生としては分に過ぎていた。
三十年前の島田沼南 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
つややかな黒髪を惜気もなくグッと引詰ひっつめての束髪、薔薇ばら花挿頭はなかんざししたばかりで臙脂べにめねば鉛華おしろいけず、衣服みなりとても糸織の袷衣あわせに友禅と紫繻子の腹合せの帯か何かでさして取繕いもせぬが
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
勇助どんは年をっていますから、高輪の伊勢屋で若旦那のお傍に附いていまして、わたしだけ方々駈け摺り廻ってるんですが、若旦那がお屋敷へ御帰参になるので、実に大騒ぎというのは、お衣服みなりから
衣服みなりの粗末なるにはやあなどかろしめた言葉づかい、十兵衛さらに気にもとめず、野生わたくしは大工の十兵衛と申すもの、上人様の御眼にかかりお願いをいたしたいことのあってまいりました
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
だからうスッカリ日本の賽転さいころで狐だの長半などをやって居るワ(大)けどが博奕打にしては衣服みなりが変だよ博多の帯に羽織などは—(谷)ナアニ支那人の博奕宿へ入込む連中には黒い高帽を
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)