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蘇芳
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すおう
ふりがな文庫
“
蘇芳
(
すおう
)” の例文
さっきの異人に負けず劣らずの大兵で、肩などは
巌
(
いわお
)
のように盛りあがり、首筋はあくまでも赤く、まるで
蘇芳
(
すおう
)
を塗ったようであった。
重吉漂流紀聞
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
冠
(
かぶ
)
せた
半纏
(
はんてん
)
を取ると、後ろから
袈裟掛
(
けさがけ
)
に斬られた伊之助は、たった一刀の下に死んだらしく、
蘇芳
(
すおう
)
を浴びたようになっております。
銭形平次捕物控:051 迷子札
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
垂髫
(
すいちょう
)
のろうろうしさを以て、繊小な足跡を山上の火山灰に印したと聞いては、眉を描き、眼尻を塗り、
蘇芳
(
すおう
)
に頬を染める女学生すらある今日に
女子霧ヶ峰登山記
(新字新仮名)
/
島木赤彦
(著)
栞を
介
(
かか
)
えている頼母の姿は、数ヵ所の
浅傷
(
あさで
)
と、敵の返り血とで、
蘇芳
(
すおう
)
でも浴びたように見えてい、手足には、極度の
疲労
(
つかれ
)
から来た
戦慄
(
ふるえ
)
が起こっていた。
血曼陀羅紙帳武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
女は急に手足が
竦
(
すく
)
むように覚えた。そうして女は殆どわれを忘れて、いそいで自分の小さな体を色の
褪
(
さ
)
めた
蘇芳
(
すおう
)
の衣のなかに隠したのが
漸
(
や
)
っとのことだった。
曠野
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
▼ もっと見る
そして
何時
(
いつ
)
も一人が
蘇芳
(
すおう
)
の色なら別の一人も、それに似た衣をきることも、何と似かようた二人であったろう、それに、橘一人に通うということにも、いまは
姫たちばな
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
山吹、濃い
蘇芳
(
すおう
)
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
年のせいで咽喉の皮膚がたるみ、酒焼けなのか潮焼けなのか、首が
蘇芳
(
すおう
)
でも塗ったように赤いので、そのへんが七面鳥の
喉袋
(
のどぶくろ
)
みたいにみえる。
復活祭
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
人垣は物の崩れるように、ゾロゾロと倒れているお菊の方に移りましたが、
蘇芳
(
すおう
)
を浴びた虫のように
蠢
(
うごめ
)
く
断末魔
(
だんまつま
)
の娘をどうしようもありません。
銭形平次捕物控:066 玉の輿の呪い
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
と鎧に立つところの矢、十六筋を立てたまま、全身
蘇芳
(
すおう
)
の色に染まった彦四郎義光は、がばと坐り
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「
蘇芳
(
すおう
)
に
紫苑
(
しおん
)
の同じお好みにございます。そしてただひと目だけでもお目もじにあずかりたいとお互に申しておられます。何とぞ、ひと目だけお目にかかられますよう。」
姫たちばな
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
蘇芳
(
すおう
)
をまきちらしたようなおびただしい血のあとを、たわしに灰をつけて、ひっそりと洗いつづけるのだった……
金狼
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
三助の丑松はそれを少し
退
(
ど
)
かせて、油障子の
天窓
(
そらまど
)
から入る、午後の陽を一パイに石榴口から入れて見ると浴槽の中は、さながら
蘇芳
(
すおう
)
を溶いたよう、その中に
銭形平次捕物控:033 血潮の浴槽
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
次の夕方に一人が
蘇芳
(
すおう
)
の色の濃い衣をきてくれば、べつの若者はまたその次の日の夕方には、藤色とも
紫苑
(
しおん
)
の色にもたぐうような衣をつけ、互の
心栄
(
こころば
)
えに遅れることがなかった。
姫たちばな
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
「
蘇芳
(
すおう
)
か何かで染めるんだな」
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
嘗て、山形藩随一の使い手と言われた腕は、異常な興奮に冴え返って、触るる者悉く斬って、自分も満身の返り血に
蘇芳
(
すおう
)
を浴びたようになってしまいました。
十字架観音
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
お余野は尻ごみするから、あっしが飛んで行って起してやると、それがお萩で、頭を打ち割られて、全身
蘇芳
(
すおう
)
を浴びたようになって居ましたが、もう虫の息もありません。
銭形平次捕物控:242 腰抜け彌八
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
二人とも
薄傷
(
うすで
)
を負ったらしく、山浦丈太郎はわけても、頬や腕のあたりにかすり傷を受けましたが、
蘇芳
(
すおう
)
を浴びたようになり乍ら、気力を励まして、
必死
(
ひっし
)
と切り結びます。
大江戸黄金狂
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
刺された拍子に転げ込んだものと見えて、下水の中は
蘇芳
(
すおう
)
を流したようになっております。
銭形平次捕物控:013 美女を洗い出す
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
そのうちの幾つかは
庇
(
ひさし
)
の下にハミ出して、それが、お安の頭を打ったのでしょう、わけても、
沢庵
(
たくあん
)
の重しほどの三四貫もあろうと思われる御影の三角石は、
蘇芳
(
すおう
)
を塗ったように
紅
(
あけ
)
に染んで
銭形平次捕物控:032 路地の足跡
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
右手に持ったのは、銀紙貼りの竹光、それは
斜
(
はす
)
っかいに切られて、肩先に
薄傷
(
うすで
)
を負わされた上、左の胸のあたりを、したたかに刺され、
蘇芳
(
すおう
)
を浴びたようになって、こと切れているのでした。
銭形平次捕物控:063 花見の仇討
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
あの玄翁は両手で振りおろしたのじゃない。両手で使ったら、血飛沫で全身
蘇芳
(
すおう
)
を浴びたようになるはずだ。——あれは二枚
屏風
(
びょうぶ
)
を小楯に、片手で打ちおろしたんだ。お前も屏風一面に
飛沫
(
しぶ
)
いた血を
銭形平次捕物控:026 綾吉殺し
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
晴着らしい
単衣
(
ひとえ
)
の胸から腰まで
蘇芳
(
すおう
)
を浴びたようになって、左顎の下へ、斜めに開いた
瘡口
(
きずぐち
)
は、それほど大きいものではありませんが、
漸
(
ようや
)
く脂の乗って来た豊満な大年増の顔は、
蝋
(
ろう
)
のように蒼ざめて
銭形平次捕物控:053 小唄お政
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
心
(
しん
)
の臓をえぐられて、
蘇芳
(
すおう
)
を浴びたようになって死んで居る
銭形平次捕物控:239 群盗
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
“蘇芳(スオウ)”の解説
Biancaea sappan
Biancaea sappan
スオウ(蘇芳、蘇方、蘇枋)は、マメ科ジャケツイバラ亜科の小高木。インド、マレー諸島原産。
(出典:Wikipedia)
蘇
漢検準1級
部首:⾋
19画
芳
常用漢字
中学
部首:⾋
7画
“蘇芳”で始まる語句
蘇芳染
蘇芳貝