蓬莱屋ほうらいや)” の例文
問屋といや九太夫くだゆうをはじめ、桝田屋ますだやの儀助、蓬莱屋ほうらいやの新七、梅屋の与次衛門よじえもん、いずれもかみしも着用に雨傘あまがさをさしかけて松雲の一行を迎えた。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
鳴き渡る音も趣味おもむきある不忍しのばずの池の景色を下物さかなのほかの下物にして、客に酒をば亀の子ほど飲まする蓬莱屋ほうらいやの裏二階に、気持のよさそうな顔して欣然と人を待つ男一人。
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
をしへけるにぞ吉之助承知して其後そののち又々涼船すゞみぶね花火はなび見物けんぶつの時六之助同道どうだうにて吉原へ行き蓬莱屋ほうらいやと云ふ六之助が馴染なじみの茶屋へ上りけるに吉之助は傳兵衞がをしへはこゝなりと女房にようばうむすめ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「ヘイ蓬莱屋ほうらいや御座ござい、ヘイ西村で御座い」と呼びつつ、手に手に屋号の提燈ちょうちんをひらめかし、われらに向かいてしきりに宿泊を勧めたるが、ふと巡査の護衛するを見、また腰縄のつけるに一驚いっきょうきっして
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
次郎が蓬莱屋ほうらいやの子に、桃さ、お前は会津におなりと言っても、あの蓬莱屋の子は黙っていて、どうしても会津になろうとは言い出さない。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
時を気づかう尾州の御隠居(慶勝よしかつ)が護衛の兵を引き連れ熱田あつたまで新帝をお出迎えしたとの話を持って来るのは、一番年の若い蓬莱屋ほうらいやの新助だ。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
その声は桝田屋ますだやおよび出店でみせをはじめ、蓬莱屋ほうらいや、梅屋、その他の分家に当たる馬籠町内の旦那衆の中から出、二十五軒あるふるい御伝馬役の中からも出た。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
問屋九郎兵衛をはじめ、年寄役の桝田屋小左衛門ますだやこざえもん、同役蓬莱屋ほうらいや新七のせがれ新助、同じく梅屋五助なぞは、組頭くみがしら笹屋庄助ささやしょうすけと共に思い思いに奔走していた。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
旧宿役人仲間でも一番年下に当たる蓬莱屋ほうらいやの新助が進み出て、これは宗太を出すにかぎる、宗太なら現に青山の当主であるからその人にさせるがいい
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
そこは会所と呼んでいるところで、伏見屋、桝田屋ますだや蓬莱屋ほうらいや、梅屋とこの四人の年寄役のほかに、今一軒の問屋九郎兵衛くろべえなぞが事あるごとに相談に集まる場所だ。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
場処は蓬莱屋ほうらいや。時刻は七つどき。食い手は吉左衛門と金兵衛の二人。食わせる方のものは組頭くみがしら笹屋ささや庄兵衛しょうべえ小笹屋こざさやの勝七。それには勝負を見届けるものもなくてはならぬ。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
この宿場では、定助郷じょうすけごう設置の嘆願のために蓬莱屋ほうらいや新七を江戸に送ったばかりで、参覲交代制度の変革以来に起こって来た街道の混雑を整理するいとまもなかったくらいである。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
戊辰ぼしんの際に宿役人に進んだ亀屋かめや栄吉をはじめ、旧問屋九郎兵衛、旧年寄役桝田屋小左衛門ますだやこざえもん、同役蓬莱屋ほうらいや新助、同じく梅屋五助、旧組頭くみがしら笹屋ささや庄助、旧五人組の重立った人々
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
右に問屋、蓬莱屋ほうらいや、左に伏見屋、桝田屋ますだやなぞの前後して新築のできた家々が両側に続いている。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
桝田屋ますだやからは何を祝ってくれ、蓬莱屋ほうらいやからも何を祝ってくれたというたびに、めずらしいもの好きの弟たちまで大はしゃぎだ。しかし、かんじんのお粂はどうかすると寝たりなぞする。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)