落涙らくるい)” の例文
私はかしこまって聞き果てると、膝に手をついたッきりどうしても顔を上げてそこな男女ふたりを見ることが出来ぬ、何か胸がキヤキヤして、はらはらと落涙らくるいした。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
忽ち其墓の前に名刺めいしを置いて落涙らくるいする一青年せいねん士官しかん姿すがたが現われる。それは寄生木やどりぎ原著者げんちょしゃである。あゝ其青年士官——彼自身最早もう故山の墓になって居るのだ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
殿様がお承知の上孝助殿をむこにとる事に極って、明日あすは殿様お立合の上で結納取交とりかわせになると云いますと、娘は落涙らくるいをして悦びました、と云うと浮気の様ですが、そうではない
伊那丸がハラハラと落涙らくるいするようすを見て
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
兄は悲しげにハラハラと落涙らくるいした。
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
採って前髪まえがみ押頂おしいただいた時、私のつむりでながら、あまりうれしさ、娘ははらはらと落涙らくるいして、もう死ぬまで、この心を忘れてはなりませんと、私のつむりさせようとしましたけれども
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と云いさしてハラ/\と落涙らくるいを致しますから、飯島平左衞門様も目をしばたゝき
と言いかけて、無邪気に、握拳にぎりこぶしで目をおさえて、かれ落涙らくるいしたのである。
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
石の下へお這入りなすったかと存じましたら胸が痛くなりまして、嫌な心持で、又うちへ帰って貴方がたのお顔を見ると、胸がける様な心持、仏間に向って御回向ごえこう致しますると落涙らくるいするばかりで
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
御懇ごこんの御意で喜一郎富彌は落涙らくるい致しました。
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)