落々おちおち)” の例文
それでも何うも夜も落々おちおち眠られないし、朝だって習慣くせになっていることが、がらりと様子が変って来たから寝覚めが好くない。
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
顔色かおいろ蒼白あおじろく、姿すがたせて、しょっちゅう風邪かぜやすい、少食しょうしょく落々おちおちねむられぬたち、一ぱいさけにもまわり、ままヒステリーがおこるのである。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
今にもつわものどもの矢たけびが聞えて来はしまいか、どこぞの空が兵火に焼けていはしまいかと落々おちおちまぶたを合わす暇さえなく
雪の宿り (新字新仮名) / 神西清(著)
いもとなどもああして一つ家に住んでおりますようなものの、——何でごさんしょう。——落々おちおち話のできるのはおそらく一週間に一日もございますまい。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
この分ではとても落々おちおち流鏑馬やぶさめの見物は出来まいからとあきらめて、竜王の花火の方へ河岸かしを換えたのもあったから、竜王河原もまたおびただしい人出でありました。
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
落々おちおち御休みになれなかったことは、御顔色のあおざめていたのでも知れました。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
『これだから、夏中は非番の日でも、落々おちおち休んじゃ居られぬよ』
夏虫行燈 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼も中々なかなか落々おちおちとして寝込まれない。
死体室 (新字新仮名) / 岩村透(著)
今にもつわものどもの矢たけびが聞えて来はしまいか、どこぞの空が兵火に焼けてゐはしまいかと落々おちおちまぶたを合はす暇さへなく
雪の宿り (新字旧仮名) / 神西清(著)