草履取ぞうりとり)” の例文
さても飯島様のおやしきかたにては、お妾お國が腹一杯の我儘わがまゝを働くうち、今度かゝえ入れた草履取ぞうりとり孝助こうすけは、年頃二十一二にて色白の綺麗な男ぶりで
気味悪そうに提灯を突き出して四方あたりを見廻しているのは、やはりこの人品骨柄のよい覆面の侍のおともをして来た草履取ぞうりとりたぐいであろうと見えます。
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
武家やしきに住み、さむらいの飯をたべ始めてから数年、或いは何十年のしつけのうちに出来ているものだった。厩の小者から、草履取ぞうりとりの端まで
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大抵藩士は身分により、一人二、三人の家来を連れており、草履取ぞうりとりが弁当を持ったものだが、弁当を認めると『止まれ』といわれて中を検査された。
鳴雪自叙伝 (新字新仮名) / 内藤鳴雪(著)
次いで登城して諸家しょけの留守居に会う。従者は自らやしなっている若党草履取ぞうりとりの外に、主家しゅうけから附けられるのである。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
木下藤吉郎秀吉が信長の草履取ぞうりとりとなって草履をふところに入れてあたためた事をきい/\声で演説した。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
徒歩侍かちざむらい、目明し、草履取ぞうりとり、槍持、御用箱なんどがバラバラと走って来て式台に平伏した。
名君忠之 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
草履取ぞうりとり木下藤吉郎の人相を占って、の者天下を取ると出たのにおどろき、占いの術のインチキなるにあきれ、その場で筮竹ぜいちくをへし折り算木さんぎを河中に捨て、廃業を宣言したそうであるが
第四次元の男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「いや、草履取ぞうりとりなどから、士分に成上がったりなどすると、すぐこうなるから始末がわるいよ。はははは」
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あっ」と言いさま駈け出すのを見送って、忠利が「怪我をするなよ」と声をかけた。乙名おとな島徳右衛門、草履取ぞうりとり一人、槍持やりもち一人があとから続いた。主従四人である。
阿部一族 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「どうもおかしいぞ、あすこに供待ともまちをしているのは、ありゃたしかに神尾の草履取ぞうりとり
「では、わしの屋敷へ来い。水汲みから、草履取ぞうりとりを勤めあげたら、末は若党に取立ててやろう程に」
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
やっと草履取ぞうりとりに召使われましたのが運のはじめでございました。
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「や。そちはいつも、胤舜いんしゅん御坊の供をしてみえる、宝蔵院の草履取ぞうりとりではないか」
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
草履取ぞうりとりが説明を申し上げると