若干いくら)” の例文
大天井だいてんじょうだけを越えてからは若干いくらか道は平易ゆるくなったがやがて槍ヶ岳へかかると共ににわかに一層険しくなり、女子供は行き悩んだが
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
気懸きがかりなのはこればかり。若干いくらか、おあしにするだろう、と眼光きょのごとく、賭物かけものの天丼を照らした意気のさかんなるに似ず、いいかけて早や物思う。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
婦人の方は、先方で請出すと云ふのなら、此方こつちでも請出すまでの事。さうして、貴方の引負ひきおひ若干いくらばかりのたかに成るのですか
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
大阪まで船賃が一分二朱いちぶにしゅまかないの代は一日若干いくら、ソコデ船賃を払うたほかに二百文か三百文しか残らぬ。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
殆どささやくように言って、男の顔色がすこしばかり苛立たしくなっているのを読んだが、いつもの不機嫌とは違った若干いくらかの優しさが含まれているのをすぐに見て取った。
香爐を盗む (新字新仮名) / 室生犀星(著)
「そりゃ、あの時、そうさんが若干いくらか置いて行きなすった事は、行きなすったが、それはもうありゃしないよ。叔父さんのまだ生きて御出おいでの時分から、御前の学資は融通して来たんだから」
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
弾正太夫のべている部下は総数四千人とは云うけれど、これは直接の部下なのであって、この部下以外に間接の部下は若干いくらあるとも想像が付かぬ。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「そりや、あのときそうさんが若干いくらいてきなすつたことは、きなすつたが、それはもうりやしないよ。叔父をぢさんのきて御出おいで時分じぶんから、御前おまへ學資がくし融通ゆうづうしてたんだから」とこたへた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「そうは云っても五年前よりよくなったことも若干いくらかはある。散在していた風呂屋女を吉原の土地へ一つに集め、駿府の遊女町を持って来たなどは確かに面白い考えだ」
三甚内 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「あれで一日働いて若干いくらになるだろう」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
私は若干いくらかの嫉妬を以て斯う突っ込んでやりました。
温室の恋 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
若干いくらで抵当に入れたんだ」
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)