苅萱かるかや)” の例文
霜枯しもがれそめたひくすすき苅萱かるかやや他の枯草の中を、人が踏みならした路が幾条いくすじふもとからいただきへと通うて居る。余等は其一を伝うて上った。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
しまひには往生寺の山の上に登つて、苅萱かるかやの墓のほとりに立ち乍ら、おほきな声を出して呼び叫んだ時代のことを憶出して見ると——実に一生の光景ありさまは変りはてた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
それをのぞき込もうとすると、墓と墓との間の丈なす尾花おばな苅萱かるかやの間から、一人の女性が現われて、その覆面の中から、凄い目をして、きっと兵馬をにらみつけて
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
路、山に入つて、萩、女郎花をみなへし地楡われもかう桔梗ききやう苅萱かるかや、今を盛りの滿山の秋を踏み分けて上る。車夫が折つてくれた色濃い桔梗の一枝を鶴子は握つて負られて行く。
熊の足跡 (旧字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
在るものは欅並木に、冬の月、仕舞って帰った茶屋の婆が、仕舞い忘れた土産の木菟みみずく。形は生ものでも実は束ねた苅萱かるかや。これなら耳があったとて大事なかろう。
(新字新仮名) / 岡本かの子(著)
花の家元だけに一草亭は二人の会合を、苅萱かるかやと野菊の配合あしらひ位に軽く思つて、それを一寸取持つてみたいと思つたに過ぎなかつた。一草亭はこれまで色々いろんな草花の配合をして来たが、花は一度だつて
照りかへるすすき苅萱かるかやさみどりのひろびろし野にほつと出でつも
雲母集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「まさか。茶番じゃあるまいし。おれは苅萱かるかやよ。」
桜林 (新字新仮名) / 小山清(著)
苅萱かるかやに身にしむ色はなけれども
桶狭間合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「説教浄瑠璃と来たね、今時はあんまり江戸では聞かれねえが……なるほど、苅萱かるかやか、信濃の国、親子地蔵の因縁だから、それも本場ものにはちげえねえ……」
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
みち、山に入って、萩、女郎花おみなえし地楡われもこう桔梗ききょう苅萱かるかや、今を盛りの満山まんざんの秋を踏み分けてのぼる。車夫くるまやが折ってくれた色濃い桔梗の一枝ひとえだを鶴子はにぎっておぶられて行く。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
苅萱かるかやも、萩も、桔梗も、藤袴も、女郎花おみなえしもあって、その下にはさまざまの虫が鳴いています。
大菩薩峠:20 禹門三級の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)