花婿はなむこ)” の例文
もう真夜中をすぎていました。母親たちは花婿はなむこ花嫁はなよめにキスをしました。わたしは、花婿花嫁がふたりだけになったのを見ました。
十六の、内気な妹と二人暮しだ。この妹は、村の或る律気な一牧人を、近々、花婿はなむことして迎える事になっていた。結婚式も間近かなのである。
走れメロス (新字新仮名) / 太宰治(著)
その人影が頭をあげたとき、一すじの月光がその顔に差しこんだ。なんということだろう。彼女が見たのは幽霊花婿はなむこだった。
「一ヶ月ばかりのうちに私は花婿はなむこになる積りです。」と、ロチスター氏は續けた。「そしてその間に私があなたの仕事も落着場所も探してあげませう。」
しなくっちゃなるまいね。……ところで、もうここはいいから、帰って花婿はなむこ支度したくをしてくれたまえ。明日あすの朝は、写真屋を忘れない様にね。判は四つ切りだよ
恐怖王 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
可哀そうに、その娘は、すぐあくる日にもおれが行って、結婚の申しこみをするものと思っていたのさ、なにしろ、おれは花婿はなむことしての値打ちを認められていたんだからなあ。
連日の心労に憔悴しょうすいし切った私が、花婿はなむこらしい紋服を着用して、いかめしく金屏風を立てめぐらした広間へ案内された時、どれほど私は今日こんにちの私を恥しく思ったでございましょう。
疑惑 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
二人並んでさかずきをする時に、花婿はなむこの風采があまり爺々じじいじじいして見えるのでは、雪子が可哀かわいそうでもあるし、折角世話をした自分達にしても、列席の親類達に対して鼻を高くすることが出来ない。
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
それだのに、そんな不釣合な結婚でもすると、非難攻撃が、大変だからね。それで、わし花婿はなむこになることは思いとどまったよ。せがれの嫁にするのだ。倅の嫁にね。あれとなら、年だけは似合っているからね。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
花婿はなむこ
顎十郎捕物帳:20 金鳳釵 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
左側にはハツカネズミの紳士しんしたちが立ちならんでいて、前足でひげをなでていました。部屋のまんなかに、花嫁はなよめ花婿はなむこの姿が見えました。
それはかねて決められていた男爵の娘の花婿はなむこをむかえることについてだった。
太鼓たいこ袋笛ふくろぶえが鳴りわたりました。女たちは歌いました。そしてラクダのまわりには、喜びの砲声ほうせいが鳴りひびきました。花婿はなむこはいちばんたくさん、いちばん強く鉄砲を打ちました。
海の花婿はなむこは死にました。その城とその都市とは、いまや御陵みささぎとなっているのです。
どこの祭壇さいだんでも、りっぱな銀のランプに、よいかおりのする油が燃やされました。牧師さんたちが香炉こうろをふりました。花嫁と花婿はなむこはたがいに手をとりあって、僧正そうじょうさまの祝福をうけました。