舞妓まひこ)” の例文
少し気味が悪くなつたから、そのはうの相手を小林こばやし君に一任して、隣にゐた舞妓まひこの方を向くと、これはおとなしく、椿餅つばきもちを食べてゐる。
京都日記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「なに、先生々々と拝み倒す日には何でもあらへん、一体画家ゑかきさんたら、みんな『先生』と『舞妓まひこはん』が大好きやさかいにな。」
俺が初めて愛子の長い髪を撫でたときは、まだ十八の舞妓まひこであつた。俺があれの脂粉の香をいつくしみ初めて、一切の淫蕩を捨て去つてから二十年になる。
畜生道 (新字旧仮名) / 平出修(著)
其方も見つらん、さんぬる春の花見の宴に、一門の面目とたゝへられて、舞妓まひこ白拍子しらびやうしにも比すべからんおの優技わざをば、さも誇り顏に見えしは、親の身の中々にはづかしかりし。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
舞妓まひこの顔がをりをりに
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
舞妓まひこは風を引いてゐたと見えて、下を向くやうな所へ来ると、必ず恰好かつかうい鼻の奥で、春泥しゆんでいを踏むやうな音がかすかにした。
京都日記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
鹿子木氏はぶつ/\つぶやきながらかはばたを下つて来ると、やつと二三本舞妓まひこのやうな恰好をしたのが見つかつた。
仏人ふつじんは一歩先へ出たのだ。日本画家が写実にこだはるのは、一歩横へ出ようとするのだ。自分は速水御舟はやみぎよしう氏の舞妓まひこなぞに対すると、如何いかにも日本画に気の毒な気がする。
雑筆 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
尖つた三角型の洒落た石で、舞妓まひこの振袖にも包まれさうな小さな石碑しるしである。
それから小林君が、舞妓まひこをどりを所望した。おまつさんは、座敷が狭いから、唐紙からかみけて、次ので踊るといと云ふ。そこで椿餅つばきもちを食べてゐた舞妓が、素直すなほに次の間へ行つて、京の四季を踊つた。
京都日記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)