舗道ほどう)” の例文
電柱がたおれ、電線が低く舗道ほどうっていた。灰を吹き散らしたような雨が、そこにも落ちていた。廃墟の果てるところに海があった。
桜島 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
で、わたくしおもってそのもんをくぐってきましたが、門内もんない見事みごと石畳いしだたみの舗道ほどうになってり、あたりにちりひとちてりませぬ。
四五分経つと、いい舗道ほどうへ出たと見えて、自動車隊は速力をグンとあげた。見る見る自動車の姿は小さくなってゆく。
地中魔 (新字新仮名) / 海野十三(著)
左手へ曲ったそこに、いよいよ御影石みかげいし舗道ほどうが見えて……、もう歩いているのももどかしく、私は走り出しました。
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
そうして二人の立っている舗道ほどうを避けるように、わざと反対の方向へ歩き出した。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「おれの足はきょうも透谷の住んでいる家の前の舗道ほどうを踏んできたのだ。」
銀座の舗道ほどうから、足を踏みはずしてタッタ百メートルばかり行くと、そこに吃驚びっくりするほどの見窄みすぼらしい門があった。
地獄街道 (新字新仮名) / 海野十三(著)
水が小石にあたるような、遠いところで雨が降るような、不思議に耳慣れたおとがする。舗道ほどうの人の足をくぐりぬけて、銀杏の葉が風に吹かれて走るのである。
風宴 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
口のところへ持っていくと、ぷーんとかびくさいにおいがしたので、舗道ほどうのうえへ叩きつけた。そのほかには、油に汚れたよれよれのハンカチーフが出てきただけであった。
英本土上陸戦の前夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
それからは、やけに速足はやあしになって、監獄通りの舗道ほどうを、百ヤードほども、息せききって歩いていったが、そこで、なんと思ったか、急に足をめ、くるりと後をふりかえった。
英本土上陸戦の前夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
たとえば銀座の舗道ほどうの上に立って、一時間のうちに自分の前をすぎるギンブラ連中の服装を記録し、こいつを分類してギンブラ人種の性質を摘出てきしゅつし大胆な結論を下すことにある。
階段 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そして爆撃に震う舗道ほどうのうえを全速力でもって、リバプールの町の方へ飛ばしていった。
英本土上陸戦の前夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ロンドン市民は、寝もやらず、ついにあかつき舗道ほどうの上でむかえた者もすくなくなかった。
海底大陸 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そこから中へはいりこむと、もちろんそれはトンネルのようになっているんだが、ななめに掘ってある。左右は階段になっているが、まん中はよくすべるように、みがいた岩石の舗道ほどうになっている。
三十年後の世界 (新字新仮名) / 海野十三(著)
消防自動車は、ヨロヨロよろめきながら、燃えあがる建物めがけて、驀進ばくしんしていった。二人の消防手は、いつの間にか、舗道ほどうの消火栓の前で、力をあわせて、重い鉄蓋てつぶたをあけようと試みていた。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ポーデル博士と共に白い道路から、動かない舗道ほどうの上へとび移った。
ふしぎ国探検 (新字新仮名) / 海野十三(著)
と叫ぶと、酔漢すいかん舗道ほどうの上に、長くのめった。
間諜座事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)