興醒きょうざ)” の例文
だが時折、魯提轄の神経を針で突ッつくような興醒きょうざめが洩れてきた。さっきから、どこかでシクシクいっている女のすすり泣きである。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
というひどく興醒きょうざめの現実的の心配ばかり彼に言ってやるので、彼も面白くなくなったか、私への便りも次第に少くなって来た。
佳日 (新字新仮名) / 太宰治(著)
窓の外の木々の葉のささやきを聴きながら、かの女はしばら興醒きょうざめた悲しい気持でいた。すると何処かで、「メー」と山羊やぎが風をよろこぶように鳴いた。
母子叙情 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
さて、この興醒きょうざめな出来事に、両人共何となく面はゆい気持になって、………………………、………………夜のあけるのを待ち兼ねて、たもとを別った。
猟奇の果 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
すると二人の客は、初めのうちこそ熱心に耳を傾け目をそばだてているようであったが、しばしすると興醒きょうざめたような顔をして、気の毒そうにたばこなど吹しはじめました。
艶容万年若衆 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
黒須を送り出した葉子は、すぐに部屋へ帰って来たが、興醒きょうざめのした顔でぷりぷりしていた。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
白雲から素気すげなくいわれて、お角は急に興醒きょうざめ顔になり
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
いちど興醒きょうざめた心は呼び戻しようもない気がする、それが遊びの世界であるがゆえに、よけいに気持の妥協だきょうがつかないのである。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かの女は他人ひとのことばかりに思いやりが良くて、自分の息子には一向無関心らしい老紳士が、あらっぽく思えて興醒きょうざめた。
母子叙情 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「君はバイロンかい。」私は努めて興醒きょうざめの言葉を選んで言った。少年の相変らずの思わせぶりが、次第に鼻持ちならなく感ぜられて来たのである。
乞食学生 (新字新仮名) / 太宰治(著)
気紛きまぐれの散歩のようでもあり、雪枝はその意味がわからず、中ごろから少し興醒きょうざめの形であったが、町はずれまで来ると、小夜子は二階の自分の部屋に飾るような刺繍ししゅうの壁掛けを買い
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
孔明はふと眉を曇らせたが、なお将士のかん興醒きょうざめさせまいと、何気ない態で杯をかさねていると、侍中の一士が
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そんなことはない」とアルトゥールは写真師をむように云ったが、すぐ興醒きょうざめ声になっていった。
母子叙情 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「さあ、何とでも言うがいい。」と佐伯は、ほんものの悪党みたいな、下品な口をきいたので、私は興醒きょうざめして、しきりに悲しかった。佐伯の隣りの椅子に、腰をおろして
乞食学生 (新字新仮名) / 太宰治(著)
さぞかし双方とも興醒きょうざめのすることだろうとは察しながらも、自分は、二人の今までの楽しい唯一の夢を破るまいと、たゞ笑って、老女たちのふけるまゝにその夢を残して置いた。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
静かに瞑想めいそうにふけっている時でも自分の頭の側に他の動物が来ると、パッと頭を曲げて食いつく、これがどうも実に素早いものだそうで、話に聞いてさえ興醒きょうざめがするくらいで、突如として頭を曲げて
黄村先生言行録 (新字新仮名) / 太宰治(著)
「ゆるせ、興醒きょうざめたことであろう。各〻は、存分に。存分に」
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わたくしは興醒きょうざめた気持になって、これでは葛岡のことを相談しても駄目だと思い、たださり気なく、日々通学する学園の生活のはなしをして、そこには丘の陽当りに果樹園があったり
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「やっぱり——」と云って興醒きょうざめ顔に口をつぐんだ。
河明り (新字新仮名) / 岡本かの子(著)