置床おきどこ)” の例文
「もう一人、置床おきどこの柱に小判が入つてゐる事を知つて居る者があつた筈だ。それを思ひ出しさへすれば、盜人はすぐ捕まる——が」
安手な置床おきどこのある二階の八畳で待っていると、主事と名乗ったさっきの男が、蒼白い肌の艶をみせた、四十三四の肥りかげんの中年の女を連れて入ってきて
雲の小径 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
お兄様がまだ若くて、陸軍へ出られて間もない明治十五年頃でしたろうか、千住の家で書斎にお使いの北向の置床おきどこに、横物よこものの小さいふくを懸けて眺めておられました。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
雨戸のうちは、相州西鎌倉乱橋みだればし妙長寺みょうちょうじという、法華ほっけ宗の寺の、本堂にとなった八畳の、横に長い置床おきどこの附いた座敷で、向って左手ゆんでに、葛籠つづら革鞄かばんなどを置いたきわに、山科やましなという医学生が
星あかり (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
祖師像を描いたのを懸けてあるだけの——その置床おきどこの板へ、竹の節を据えた。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
杵屋お登久はべんべら物の半纏はんてんの襟を揺り直しながら笑い顔をして半七をむかえた。彼女は松吉が裏口に忍んでいるのを知らないらしかった。半七は奥へ通されて、小さい置床おきどこの前に坐った。
半七捕物帳:08 帯取りの池 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
しました。でも、その繪圖面が、どんなに大事なものか、薄々は知つて居ましたので、私の部屋の置床おきどこの上へ置いて、直ぐ元の神棚へ行つて見ると——
雨戸あまどうちは、相州さうしう西鎌倉にしかまくら亂橋みだればし妙長寺めうちやうじといふ、法華宗ほつけしうてらの、本堂ほんだうとなつた八でふの、よこなが置床おきどこいた座敷ざしきで、むかつて左手ゆんでに、葛籠つゞら革鞄かばんなどをいたきはに、山科やましなといふ醫學生いがくせい
星あかり (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「竹筒は置床おきどこの柱のやうに見えました。誰もあんなものに千兩近い小判が入つてゐるとは思ひも寄りません」
置床おきどこの端っこのへそへ立てて、上のはりへはめ込んだんですから、七尺はありましたよ」
「太い竹筒へ入れて、父さんの寝る三畳の置床おきどこの隅に掛けておきました」