繁盛はんじょう)” の例文
奥に松山を控えているだけこの港の繁盛はんじょうは格別で、分けても朝は魚市うおいちが立つので魚市場の近傍の雑踏は非常なものであった。
忘れえぬ人々 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
なにしろこのギネタの町は、そんなに繁盛はんじょうしている町ではないから、一日のうちに、入港船も出港船も一隻もないことがめずらしくないのである。
恐竜艇の冒険 (新字新仮名) / 海野十三(著)
いわし天窓あたまも信心から、それでも命数のきぬやからは本復するから、ほか竹庵ちくあん養仙ようせん木斎もくさいの居ない土地、相応に繁盛はんじょうした。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
彼岸は仏参し、施しをなしとあるが故に、天王寺の繁盛はんじょうはまた格別だ。そのころの天王寺は本当の田舎だった。今の公園など春は一面の菜の花の田圃たんぼだった。
めでたき風景 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
公園のみは寒気強きところなれば樹木の勢いもよからで、山水のながめはありながら何となくかぬ心地すれど、一切の便利は備わりありて商家の繁盛はんじょううばかり無し。
突貫紀行 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
A級にあらずんばB級といった具合で、夜となく昼となく、すさまじい勢いで繁盛はんじょうこの上もない。
握り寿司の名人 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
これらの諸件、よく功を奏して一般の繁盛はんじょうをいたせば、これを名づけて文明の進歩と称す。
学者安心論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
この家の二、三年前までは繁盛はんじょうしたことや、近ごろは一向客足が遠いことや、土地の人々の薄情なことや、世間で自家の欠点を指摘しているのは知らないで、勝手のいい泣き言ばかりが出た。
耽溺 (新字新仮名) / 岩野泡鳴(著)
この茶店ちゃやの小さいに似合わぬ繁盛はんじょう、しかし餅ばかりでは上戸じょうごが困るとの若連中わかれんじゅう勧告すすめもありて、何はなくとも地酒じざけ一杯飲めるようにせしはツイ近ごろの事なりと。
置土産 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
非役ひやくはいもとより智力もなく、かつ生計の内職にえきせられて、衣食以上のことに心を関するを得ずして日一日ひいちにちを送りしことなるが、二、三十年以来、下士の内職なるものようや繁盛はんじょうを致し
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)