緑色りょくしょく)” の例文
まづしい店前みせさきにはおほがめかふわに剥製はくせい不恰好ぶかっかううをかはつるして、周圍まはりたなには空箱からばこ緑色りょくしょくつちつぼおよ膀胱ばうくわうびた種子たね使つかのこりの結繩ゆはへなは
そして周囲にゆらいでいる松林は小塔の緑色りょくしょくと対比して無数の渡鳥わたりどりの群のように黒く見えた。
ゴンクウルは歌麿が蚊帳美人かちょうびじん掛物かげものにつきて、その蚊帳の緑色りょくしょく女帯おんなおび黒色こくしょくとの用法の如き全く板画にのっとりしものとなせり。肉筆画の木板画に及ばざるの理由は布局ふきょくの点なり。
浮世絵の鑑賞 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
やがてミシミシという音響を発して真ン中の部分がまずくずれ始め、続いて、緑色りょくしょくの鉄と、煙を吐きつつある石炭と、真鍮製附属品と、車輪と木片と長腰掛とが、奈落の底をめがけて
なるほどそこには白いキーと、黒いキーと、も一つ、緑色りょくしょくに塗られたキーとが、重なりあって、羊羹箱ようかんばこを並べたように艶々つやつやと並んでい、見馴れぬせいか、ひどく奇異な感じを与えていた。
腐った蜉蝣 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
室戸丸は、みるみる悲惨な傾斜をなしてゆき、半ば以上も海面に緑色りょくしょくの船腹が現われてきた。やがて、鈍い、遠雷のような響きがしたかと思うと、いきなり船首から真っ縦に水に突き刺った。
潜航艇「鷹の城」 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
ゴンクウルは歌麿が蚊帳美人かちょうびじん掛物かけものにつきて、その蚊帳の緑色りょくしょく女帯おんなおび黒色こくしょくとの用法の如き全く板画にのっとりしものとなせり。肉筆画の木板画に及ばざるの理由は布局ふきょくの点なり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
成るほど一台の緑色りょくしょくに塗られた新型のクウペが、玩具おもちゃのように二丈ばかりもある岩磯の下に転げ込み、仰向あおむけにひっくりかえって、血かガソリンか、其処らの岩肌には点々と汚点が飛んでい
腐った蜉蝣 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
現代人の好んで用ゆる煉瓦の赤色あかいろと松杉の如き植物の濃く強き緑色りょくしょくと、光線の烈しき日本固有の藍色らんしょくの空とは何たる永遠の不調和であろう。日本の自然はことごとく強い色彩を持っている。
五年に至りその画風はますます繊細となり再び純粋の紅色こうしょくを用ゆると共にまた軟き緑色りょくしょくを施すを常とせり。婦女の髪は頂において幅広く眼は一直線をなして直径の如くに中央を横切りたり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
あるひはまた深川万年橋ふかがわまんねんばしの図において橋上の人物は橋下きょうかの船及び両岸の樹木と同様の緑色りょくしょくを以て描きいだされたるが如き、これ皆天然の色彩を離れて専ら絵画的快感を主としたるものならずや。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)