総立そうだち)” の例文
式長はムネ・シユリイである。ヱベエル、ララの二女優が文豪を讃歎する二篇の詩を交代に歌つて満場総立そうだちの拍手の中に式が終つた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
忽ち多くの病室へつたはつて、患者は総立そうだち。『放逐してしまへ、今直ぐ、それが出来ないとあらば吾儕われ/\こぞつて御免を蒙る』と腕捲うでまくりして院長をおびやかすといふ騒動。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
里言さとことばにこれを雁の総立そうだちといふ。雁のそなへある事軍陣ぐんぢんごとし、とりになき事也、他国の雁もしかならん。田舎人ゐなかうどにはめづらしからねど都会とくわいの人の話柄はなしぐさにいへり。
居合せましたもの総立そうだちになって、床下までのぞきましたが、どれも札をつけて預りました穿物ばかり、それらしいのもござりませぬで、希有けうじゃと申出しますと、いや案内に立った唯今の女は
伊勢之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
船中に居ります罪人はいずれも大胆不敵の曲者くせものでありますが、流石さすがおもてに一種のうれいを帯び、総立そうだちに立上りまして、おかを見上げるていを見るより、河岸にる親戚故旧の人々はワッ/\と声を放って泣叫ぶ。
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
○ 雁の総立そうだち