算盤玉そろばんだま)” の例文
算盤玉そろばんだまに当って、差引こうというほど生意気なことは無い、いわんや、それに恩をせるに到っては、不届ふとどきといわざるを得ないな。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
藍微塵あいみじん素袷すあわせ算盤玉そろばんだまの三じゃくは、るから堅気かたぎ着付きつけではなく、ことった頬冠ほおかむりの手拭てぬぐいを、鷲掴わしづかみにしたかたちには、にくいまでの落着おちつきがあった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
この辺の者とみえて吉原つなぎの袷袢纏あわせばんてんに、算盤玉そろばんだまの三尺をしめ、ウーム、ウームと、土を吹いて苦しげにうめいている。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この方面の研究者にとっては一つ一つの地震は単に一つ一つの算盤玉そろばんだまのようなものである、たとえ場合によっては地震の強度を分類する事はあっても
地震雑感 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
「なるほど。この算盤玉そろばんだまのようなのが、新式の廻転錐でありますか。これが、どうなるのでしょうか」
未来の地下戦車長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
製作形状せいさくけいじやう等に付ては土器の事を言ふりに細説さいせつすべけれど、大概たいがいを述ぶれば其全体ぜんたいは大なる算盤玉そろばんだまの如くにしてよこ卷煙草まきたばこのパイプをみぢかくせし如き形のぎ出し口付きたり。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
算盤玉そろばんだまからはじき出したら矢野のいう通りに温和おとなしくなってる方が得策であったかも知れないが、矢野が世話を焼けば焼くほど、世話になるが利益と思えば思うほど益々反抗して
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
パチパチ算盤玉そろばんだまをはじいていればよいのであったが、実業学校なんかやった癖に、小説や絵や芝居や活動写真がひどく好きで、いっぱし芸術が分るつもりでいた私は、機械みたいなこの勤務を
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ハズまれたかしらねえが、それとこれと、どっちが算盤玉そろばんだまに合うか、よく考えて返辞をしろ
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
どこか算盤玉そろばんだまが並んだ如くであった。