“筆紙(ひっし)” の例文
それに火をつけて吸いはじめたが、それは筆紙(ひっし)に尽(つく)されぬほど美味(うま)かった。凍りついていた元気が俄(にわ)かに融(と)けて全身をまわりだした感じだ。
流線間諜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
開(あ)け放(はな)った障子(しょうじ)の隙間(すきま)からはお庭(にわ)もよく見(み)えましたが、それが又(また)手数(てかず)の込(こ)んだ大(たい)そう立派(りっぱ)な庭園(ていえん)で、樹草(じゅそう)泉石(せんせき)のえも言(い)われぬ配合(はいごう)は、とても筆紙(ひっし)につくせませぬ。
その境遇の悲惨なるなかなか筆紙(ひっし)の尽し得る所にあらざりしかど、富豪の家に人となりし彼の、別に苦情を訴うることもなく、むしろ清貧に安んじたりし有様は、妾(しょう)をして
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
そのまま抽斗の中に死蔵(しぞう)されて、さぞかしその時になったら、娘や婿や、また恐らくは、自から彼の親類と称している例の大尉などの筆紙(ひっし)につくし難(がた)いほどの喜びとなる運命だろう。
止(や)むを得ず妾を畜うの場合に至りしは無理もなきことにして、またこれ一国の一主義として恕(じょ)すべきに似たれども、天下後世これより生ずる所の弊害は、実に筆紙(ひっし)にも尽し難きものあり。
日本男子論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
更(さら)に又(また)何(なに)かの場合(ばあい)に神々(かみがみ)がはげしい御力(おちから)を発揮(はっき)される場合(ばあい)には荘厳(そうごん)と言(い)おうか、雄大(ゆうだい)と申(もう)そうか、とても筆紙(ひっし)に尽(つく)されぬ、あの怖(おそ)ろしい竜姿(りゅうし)をお現(あら)わしになられます。
それから十五分ほどたって、四隻がてんでに舷側(げんそく)から火をふきながら、仲よく揃って、ぶくぶくと波間(なみま)に沈み去ったその壮観(そうかん)たるや、とても私の筆紙(ひっし)に尽(つく)し得るものではなかった。