笑顔わらいがお)” の例文
旧字:笑顏
其の人が着物を着替る時に、紺縮緬の胴巻がバタリと落ちたら慌てゝかくすから、わっしア取りやアしないったら、ニヤリと笑顔わらいがおをして居たが
ドアがいて、庶務しょむ北川きたがわが入って来た。株式会社西村にしむら電気商会主の西村陽吉ようきちは、灰皿の上に葉巻を置いて、クルリと廻転椅子いすまわ笑顔わらいがおを向けた。
「もとは柳橋やなぎばしにいた奴だよ、今は、駒形堂こまがたどうの傍に、船板塀ふないたべい見越みこしまつと云う寸法だ、しかも、それがすこぶるの美と来てるからね」と小声で云って笑顔わらいがおをした。
水魔 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「ですから行きますよ。少し気分がくなったら急度きっと行きます」お島は涙を拭きながら、やっ笑顔わらいがおを見せた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
(旦那のここに居るのがどないして知れた、何や、)とまた怒鳴って、(判然はっきりぬかしおれ。何や? 番頭が……ふ、ふ、ふ、ふん、)とあざけるような、あの、すご笑顔わらいがお
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
Mは膝ほどある水の中に幾分いくぶんか腰をかがめたなり、日に焼けた笑顔わらいがおをふり向けて見せた。
海のほとり (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「うん、大丈夫だよ」父親はいて笑顔をつくった。セメントのように硬い笑顔わらいがおだった。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「なんだ。馬鹿ばかな。」男はこう云って女を引っ張って、そばへ腰を掛けさせた。そして笑顔わらいがおをして女を見て接吻せっぷんした。この女はいつも暖かい、柔かに肥えた唇をしているのである。
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
守は彼女のこういう笑顔わらいがおを今まで一度も見たことがなかったので、このおばさんにも、こんな表情があったのかしらと、何か発見でもしたような感じであった。
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
お累は大病でございます、何卒どうかお累の病気全快を願います、新吉と手を切りまして、一つ処へ親子三人寄って笑顔わらいがおを見て私も死度しにとうございます、何卒おまもりなすって下さいまし
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
帆村は、はじめて笑顔わらいがおになった。
宇宙戦隊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
能く考えて御覧、都合のい時分に何か買って行って、これをおたべ、これをお着と云って菓子のおり反物たんものの一反も持ってけばニコ/\笑顔わらいがおをするけれども、少し鼻薬が廻らなければ
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)