種板たねいた)” の例文
その光はそれと相対の位置に据付けてある幻燈フロ種板たねいたとレンズを透して反対側の壁に像を結ぶという他愛のない仕掛なのであります。
そこで私はその汚点しみを写真に撮って、種板たねいたを補力して焼付けてみると、果して手型に相異なく、しかも長い華奢な手で、あらゆる細部が
鏡面レンズに照して二三の改むべきを注意せし後、子爵は種板たねいた挿入さしいるれば、唯継は心得てそのちかきを避けたり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
その種板たねいたと今度の写真の種板とが二重に焼付けられたとでもいうことではないか知ら、そんな馬鹿馬鹿しいことまで考えて、態々わざわざ写真屋へ使つかいをやって調べさせたが
幽霊 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
眼より直ちに種板たねいたとも云うき余の心に写りたる所は分明ふんみょうなるのみかは爾後じご幾年を経たる今日こんにちまで少しも消えず、余は今もお其時の如くおぼれば少しの相違も無くそのへやを描き得ん
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
その頃は筆名ともペンネームとも言わず、親の付けた名前でない、気取った仮名を昔からの言い慣わしで雅号と言ったものである。映画を活動写真、レコードを種板たねいたと言った時代のことである。
巧いこというてお母さんまるめてしもて、そいから綿貫のとこい出かけて、結局この方はお金でらちいたいうて、例の新聞い売るいうてた証文の写真と、種板たねいたと、夫から渡したあった預かり証と
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
写真の種板たねいたにも感光しないような人物を見る。ガラスの眼玉でものを読む。舌を垂れて、一語一語の間に草がえるような文句をしゃべる。嵌木はめきゆかでもこするように自分の額をさする。くしゃみをする。