あたい)” の例文
番「たいでもえ、あたいは理の当然をいうのや、お嬢さまを殺して金子かねを取ったという訳じゃないが、う思われても是非がないと云うのや」
闇夜の梅 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「可いよ、可いよ、あたい、私はね、こんなうつくしい蒲団に坐る乞食なの。国ちゃん、おこも敷いてるんじゃないや。うつくしい蒲団に坐る乞食だからね。」
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
懷手をした儘で長火鉢の向うに坐つて「だけどねえ、姉さん、姉さんが行つてしまふとあたい淋しいわ」
俳諧師 (旧字旧仮名) / 高浜虚子(著)
「何だかそんなこといっていたけれど、あたいあんな男大嫌だいきらいさ。」
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
仔細しさいいて、めうよわはう味方みかたする、江戸えど連中れんぢうが、わたし會費くわいひすよ、あたいだつて。
九九九会小記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
障子の間から突き出して「姉さん、五十嵐さんあれから來ないの。隨分ね。だけどもうたつた一月だわ。お樂しみね。あゝ/\あたいなんかつまらないわ。まだ一年半もあるんだもの」
俳諧師 (旧字旧仮名) / 高浜虚子(著)
深川の芸者に残らず着て貰いたい、恥を掻いて間が悪いから吉田の顔を立って着ておくれという、おゝ嬉しいこと、吉田さんわたしが着よう、あたいも着ようと深川の芸者が残らず羽織を着たから
「ぢやあたいのお父ちやん嘘吐うそつきだ。私をだましたんだ。」
チビの魂 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
みんなで、余所よその叔父さんと、兄さんと、染ちゃんと、皆でね、お酒を飲んでそうして遊んでいるの、にぎやかだよ。あたいばかり寂しいの、一所に遊びたいんだけれど、お寝、お寝って言うもの。」
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「そうじゃあなくッて、あたい床ン中に入ってからね、母様おっかさんが居なくッて寂しくッて寝られないんだ。伯母さんも、染ちゃんも、余所の人もみんなおもしろそうだよ。賑かなの。私一人寂しいんだ。」
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)