石塔せきとう)” の例文
木が無くなった森の跡は、ちょうど墓場はかばのようでした。大きな木の切株きりかぶは、石塔せきとうのように見えました。王子はその中を飛んでゆかれました。
お月様の唄 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
古い石塔せきとうの台石を持ちあげると、その下にポッカリ地下道の入り口があいていましたし、篠崎さんの庭のほうは、穴の上に厚い板をのせて
少年探偵団 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
そこへまた、このあいだ城外へ出て行った浄信寺じょうしんじ雄山ゆうざんが、まがだにの奥から、わざわざ人夫に石塔せきとうを負わせて、帰って来た。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さて日本人につぽんじんふるはか今日こんにちのように石碑せきひ石塔せきとうてたのではなく、たいてい土饅頭つちまんじゆうのようにたかくなつてゐるので、私共わたしどもはこれを高塚たかつかとか、古墳こふんまをしてをります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
平太郎へいたろうがおやじの石塔せきとうを建てたから見にきてくれろと頼みにきたとある。行ってみると、木も草もはえていない庭の赤土のまん中に、御影石みかげいしでできていたそうである。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
母の石塔せきとうの左側に父の墓はまだ新しい。母の初七日しょなぬかのおり境内へ記念に植えた松の木杉の木が、はや三尺あまりにのびた、父の三年忌には人のたけ以上になるのであろう。
紅黄録 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
つめた石塔せきとうに手を載せたり、湿臭しめりくさ塔婆とうばつかんだり、花筒はなづつ腐水くされみずに星の映るのをのぞいたり、漫歩そぞろあるきをして居たが、やぶが近く、ひどいから、座敷の蚊帳が懐しくなって、内へ入ろうと思ったので
星あかり (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かねがね聞いた村の変化へんか兄夫婦あにふうふのようす、新しくけばけばしかった両親の石塔せきとうなどについて、きれぎれに連絡も何もない感想が、ただわけもなく頭の中ににぶい回転をはじめたのだ。
落穂 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
他人に渡すのは業腹ごうはらだから、山岡屋さんの手にげて貰って、石塔せきとうの一つも建って貰えれば有難いし、運よく、遠島えんとうとでもなって、娑婆の風にふかれる日があったら、そのうちの幾分いくぶんでも
魚紋 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あの、二人で石をのつけたの、……お石塔せきとうのやうな。」
夜釣 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)