矢叫やたけ)” の例文
然るに修理亮等は最早もはや救援の軍も近いであろうと云うので、忽ち鉄砲をもって挑戦した。盛政怒って攻め立て矢叫やたけびの声は余呉の湖に反響した。
賤ヶ岳合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
交野かたの平六へいろくが、おのをたたいて、こうののしると、「おう」という答えがあって、たちまち盗人の中からも、また矢叫やたけびの声が上がり始める。
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そのうちに、城門外では、ひと合戦終ったか、矢叫やたけびや喊声かんせいがやんだと思うと、寄手の内から一人の大将が、馬を乗出して、大音声にどなっていた。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
浅草の空に翻る旗差し物、鐘、太鼓、鳴り物の響き、ときの声、矢叫やたけびの音は、皆この一人当たり一円六十八銭弱の争奪戦のどよめきと見るべきである。
矢叫やたけときこえの世の中でも放火殺人専門の野蛮な者では無かった。机にりて静坐して書籍に親んだ人であった。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
戦国の慣いどこへ行っても矢叫やたけびの声武者押しの音、有能の士は抱えられた。だが俺だけは駄目だった。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
血腥ちなまぐさい木枯らしの矢叫やたけびは、元日とても吹きすさんだ。低い冬雲の乱流する下、葛城連峰かつらぎれんぽうから飛ぶ粉雪の果て
日本名婦伝:大楠公夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
時代とき足利あしかが末葉まつようで、日本歴史での暗黒時代、あっちでも戦い、こっちでもいくさ、武者押しの声や矢叫やたけびの音で、今にも天地は崩れるかとばかり、尾張おわりには信長、三河には家康、甲斐かいには武田
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
こんな島にいては、井の中のかわずだ、わからぬはずよ。だが今日もひろい本土の空の下では、いたるところの山河が矢叫やたけびや武者吠えあげて、はや羽蟻の巣にひとしい幕府の古屋台をゆすぶっている。
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
鬨の声、矢叫やたけびの音、今や戦いはたけなわであった。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)