めくるめ)” の例文
答は無くて揮下ふりおろしたる弓の折は貫一が高頬たかほほ発矢はつしと打つ。めくるめきつつもにげ行くを、猛然と追迫おひせまれる檳榔子は、くだんの杖もて片手突に肩のあたりえいと突いたり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
これだけでもめくるめくばかりなるに、足許あしもとは、岩のそのつるぎの刃を渡るよう。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
毒になやみてめくるめき、あさりみぬる
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
下痢幾日青葉若葉もめくるめ
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今は心もそぞろに足をはやむれば、土蔵のかども間近になりて其処そこをだに無事に過ぎなば、としきりに急がるる折しも、人の影はとつとしてその角よりあらはれつ。宮はめくるめきぬ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
時に青空に霧をかけた釣鐘が、たちまち黒く頭上を蔽うて、破納屋やれなやの石臼もまなこが窪み口が欠けて髑髏しゃりこうべのように見え、曼珠沙華まんじゅしゃげも鬼火に燃えて、四辺あたり真暗まっくらになったのは、めくるめく心地がしたからである。
夫人利生記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
浴衣ゆかたながら帯には黄金鎖きんぐさりを掛けていたそうでありますが、揺れてその音のするほど、こっちをすかすのに胸を動かした、顔がさ、葭簀よしずを横にちらちらとかすみを引いたかと思う、これにめくるめくばかりになって
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)