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省愼
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たしなみ
賣に參らんと
今質より受出して來たる
衣服并に
省愼の大小を
帶し立派なる
出立に支度なして居たる處へ同じ長家に居る
彼張子の
釣鐘を
不時の
大騷動に、
愕き
目醒めたる
春枝夫人は、かゝる
焦眉の
急にも
其省愼を
忘れず、
寢衣を
常服に
着更へて
居つた
爲めに、
今漸く
此處まで
來たのである。
見るより
私は
領し
物頭役を
相勤めたる大橋文右衞門
清長率鎌倉と云ふ時のため武士の
省愼差替の大小
具足一
領位は所持致し居り候
是御覽候へと
仕舞置たる
具足櫃并びに差替の大小を
所持するは
甚だ以て
不審なり其道具は如何致して
所持するやと申されしかばお政は
平伏して恐れながら此道具と申は
夫文右衞門國元より持參致したる品々にて萬一
舊主へ
歸參仕つる事もありし時の
爲省愼置し道具に御座候と申を