直伝じきでん)” の例文
旧字:直傳
茂太郎がいよいよ独擅どくせんを発揮し、独擅といっても、元はといえば、内容節調みな白雲先生の直伝じきでんによるところのものに相違ないが——
大菩薩峠:34 白雲の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
えらいのは、旅の修行者しゅぎょうじゃ直伝じきでんとあって、『姑蘇啄麻耶啄こそたくまやたく』とじゅして疣黒子いぼほくろを抜くという、使いがらもって来いの人物。
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
もし道元の真理が純粋に直伝じきでんさるべきものであるならば、何ゆえに彼はその多量な説教の書を書き残したか。
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
ところで、ボル派のアナ攻撃は、プレカアノフなんかからの直伝じきでんのその理窟などより、理窟もクソもない頭からの罵倒ばとうが、実は俺たちをもっとも怒らせていたのだ。
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
早くも胡散うさんな奴と知ったゆえ、二度目に駕籠脇へ近よろうとした前、篠崎竹雲斎しのぎきちくうんさい先生せんせい直伝じきでんの兵法をちょっと小出しに致して、ぴたり駕籠の天井に吸いついていたのじゃよ
ただいまお目にかけましたるは、藤田西湖直伝じきでん、繩抜けの妙術にござりまする。これごろうじませ、抜けましたるベルトは、この通り、ちゃんと元の形をたもっておりまする。
月と手袋 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
そうしてまた、工事に関係する技術者がわが国特有の気象に関する深い知識を欠き、通り一ぺんの西洋直伝じきでんの風圧計算のみをたよりにしたためもあるのではないかと想像される。
天災と国防 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
西洋の狸から直伝じきでんに輸入致した術を催眠法とかとなえ、これを応用する連中を先生などとあがめるのは全く西洋心酔の結果で拙などはひそかに慨嘆がいたんいたりえんくらいのものでげす。
琴のそら音 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「これは神さまの直伝じきでんだ」
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
がんりき直伝じきでんの胆吹留守師団の物語を語って、一揆解消の青嵐居士の手柄話にまで及んだ後に、余談として、実は本談以上の興味ある会話に膝を進ませました。
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
が、それは、打坐が仏祖自身の修行法であり、またその直伝じきでんの道だからである。かくて「仏祖の模倣」は彼の修行法の根柢に横たわっている。戒律を守るのも仏祖の家風だからである。
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
慷堂直伝じきでんの大喝一声で俺は看守を睨みつけた。
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
天竺てんじく、即ち印度インドでは霊鷲山りょうじゅせんいぬいかたにあり、支那では天台山の乾の方、日本ではこの比叡山の乾、即ち当山、大原来迎院を即ち魚山というのです、慈覚大師直伝じきでん
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
一方、俗人の方においては中村市右衛門尚政という者が、これが宝蔵院覚禅房直伝じきでんじゃ。いま天下に行われる当流の槍は、この中村の流れを汲むが多いということである
もぐさに事は欠かない、お望みなら、それをひとつお雪ちゃん、あなたにこの場で据えて進ぜましょう——きますぜ、道庵が師匠からの直伝じきでんの秘法なんですから、効き目はてきめんでげす。
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
自分もそこでお松直伝じきでんの教育をはじめることになりました。
大菩薩峠:35 胆吹の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)