目覚めざめ)” の例文
旧字:目覺
矢田はまじめらしく何か言おうとした時、女中が障子の外から、「もうお目覚めざめですか。お風呂ふろがわきました。」
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
真に目覚めざめた、いままでの生涯に、夢にも知らなかった誠実をかてにして、遺産は子供と母親たちに残して、共にに豆をこしらえるふうになってしまったときいたならば
一世お鯉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
じつは御目覚めざめになる迄つてゐやうかつて、此座敷迄あがつてられたんですが、先生のかほを見て、あんまりてゐるもんだから、こいつは、容易にきさうもないと思つたんでせう
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
わたくしちっとも、知らなかったのよ。お寝坊の貴方あなたの事だから、どうせ十一時近くまでは大丈夫だと思っていたのよ。昨夜ゆうべあんなに遅く帰って来たのに、よくまあ早くお目覚めざめになったこと。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
絶壁の磽确こうかくたる如く、壁に雨漏の線が入つたところに、すらりとかゝつた、目覚めざめるばかり色好いろよきぬかか住居すまいに似合ない余りの思ひがけなさに、おうな通力つうりき枯野かれのたちま深山みやまに変じて、こゝに蓑の滝、壁のいわお
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
私がひかるあやぶみますのは異性に最も近い所で開く性の目覚めざめです。
遺書 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
日常かたわらにある人の、片っぽの目が一分間見ていたよりも、知らなすぎるくらいなもので、毎朝彼女の目覚めざめ軒端のきばにとまる小雀こすずめのほうが、よっぽど起居を知っているともいえる。
柳原燁子(白蓮) (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
折から、「おや先生もうお目覚めざめでいらッしゃいますか。」
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)