おろか)” の例文
旧字:
我はアルナルドなり、泣きまた歌ひてゆく、われ過去こしかたをみてわがおろかなりしを悲しみ、行末ゆくすゑをみてわが望む日の來るを喜ぶ 一四二—一四四
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
おろかな息子も年頃になったので、調布在から出もどりの女を嫁にもろうてやった。名をおひろと云って某の宮様にお乳をあげたこともある女であった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
おろかながらも姓名だけは四郎も知って居りましたので、老人の側へ坐わり乍ら斯う無邪気に云ったものです。
天草四郎の妖術 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
それを区役所に問うのは余りにおろかであろう。むしろ行政上無縁の墓の取締とりしまりがあるか、もしあるなら、どう取り締まることになっているかということを問うにくはない。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
恋は到底おろかなもの、少しささえられると、すぐ死にたき思いになる、少し満足すればすぐ総てを忘れる。思慮のある見識のある人でも一度恋に陥れば、痴態を免れ得ない。
春の潮 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
闇太郎は、驚かないわけに行かない——恋に狂う女の、おろかさを、浅間しさを、いじらしさを——
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
なみだとどめあへぬはおろかじゃう自然しぜんなれども、理性りせいまなこからは笑草わらひぐさでござるぞよ。
お信を殺すほどのおろかにもなれず、父を殺すだけの狂気も持てず、ずる/\お信の肉体に引きずられ、彼はやはり苦しい土蔵の秘密を秘密とする哀れな破廉恥な自分を見つめて二年の年月を送った。
地上:地に潜むもの (新字新仮名) / 島田清次郎(著)
気早でおろかな、ほんに女子染おなごじみた女子達だね。
戸籍面こせきめんの父はおろかで、母は莫連者ばくれんもの、実父は父の義弟ぎていで実は此村の櫟林くぬぎばやしひろわれた捨子すてごである。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
これよりは騷ぐことはなけれど、精神の作用は殆全く廢して、そのおろかなること赤兒の如くなり。醫に見せしに、過劇なる心勞にて急に起りし「パラノイア」といふ病なれば、治癒の見込なしといふ。
舞姫 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
おろかな奴だ——飛んで火に入る虫じゃ。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
「はい。幾らわたくしがおろかでも、当なしには申しませぬ。」
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)