-
トップ
>
-
由井
>
-
ゆゐ
荒物屋の
軒下の
薄暗い
處に、
斑犬が一
頭、うしろ
向に、
長く
伸びて
寢て
居たばかり、
事なく
着いたのは
由井ヶ
濱である。
門外の
道は、
弓形に
一條、ほの/″\と
白く、
比企ヶ
谷の
山から
由井ヶ
濱の
磯際まで、
斜に
鵲の
橋を
渡したやう
也。
此の
上で
又た
立停つて
前途を
見ながら、
由井ヶ
濱までは、
未だ三
町ばかりあると、つく/″\
然う
考へた。三
町は
蓋し
遠い
道ではないが、
身體も
精神も
共に
太く
疲れて
居たからで。