牛頭馬頭ごずめず)” の例文
その音声その語調は牛頭馬頭ごずめずの鬼どもが餓鬼を叱るもかくやらんとばかりに思はれてなかなかに前の肥えたる曹長をやさしくぼえ初めぬ。
従軍紀事 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
鰐淵直行、この人ぞ間貫一が捨鉢すてばちの身を寄せて、牛頭馬頭ごずめずの手代と頼まれ、五番町なるその家に四年よとせ今日こんにちまで寄寓きぐうせるなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
お鶴はすずしい目を下ぶせに、真中まんなかにすらりと立って、牛頭馬頭ごずめずのような御前立おんまえだちを、心置なく瞰下みおろしながら、仇気あどけなく打傾いて
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
裸体にされた幾組の男女が、かしこの岩石の上、こなたの熱泉のほとりに引据ひきすえられている。牛頭馬頭ごずめずに似た獄卒ごくそつが、かれ等に苛責かしゃくしもとを加えている。
雲仙岳 (新字新仮名) / 菊池幽芳(著)
今日の感化院が科学の教養のない道学先生に経営され、今日の監獄が牛頭馬頭ごずめずに等しい無智なる司獄官に一任される間は百年河清かせいを待つも悪人や罪人の根を絶やす事は決して出来ない。
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
そんな道理がミジンも通らぬ。息もかれず、日の目も見えぬ。広さ、深さもわからぬ地獄じゃ。そこの閻魔えんまは医学の博士で。学士連中が牛頭馬頭ごずめずどころじゃ。但し地獄で名物道具の。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
また獄神の青面びょうの前では、この世の名残に一わんの飯と酒が与えられ、それが終ると、裸馬の背で、沿道の眼にさらされながら、牛頭馬頭ごずめずの獄卒が手綱持ちで、あまたな兵の警戒のもとに
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そこへ。」とお丹が座を示せば、老婦人の前に光子を押据え、牛頭馬頭ごずめず左右に屹立きつりつせり。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
牛頭馬頭ごずめずのように、槍をひっさげている官の小者たちがここを警戒していて、時折、中へずかずか入ってきてのぞきこんだり、つまらぬことを取り上げて威張り散らしたりしているのだった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
無論、狂人、瘋癲ふうてん病者も。申訳もうしわけだけ居るには居るが。中にまじった優れた人物。英雄、豪傑、天才なんどを。白い服着た鹿爪しかつめらしい。キチガイ地獄の牛頭馬頭ごずめずどもが。手取り足取りして行くあとから。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
ちょうど尾花の背景うしろもある、牛頭馬頭ごずめず眼張がんばりながら、昔のかたを遣ってみべいと
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
逃げようとすればするほど牛頭馬頭ごずめずの苛酷をあおるばかりです。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
牛頭馬頭ごずめずにひッぱたかれて、針の山に追い上げられるように、土手へすがって倒れたなりに上ろうとなさると、下草のちょろちょろ水の、どぶへ片足お落しなすった、荷があるから堪らないよ。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)