とつ)” の例文
あの男は華奢で女物の浴衣が似合ふから、蕎麥屋のとつさんも騙されたが、藁草履と、足を内輪にするのを忘れたばつかりにバレたのさ
この妙な女が五八頁のところで、七兵衛とお松に声をかけて、「もし/\、あのおとつさんにお娘さん」
中里介山の『大菩薩峠』 (新字新仮名) / 三田村鳶魚(著)
山内やまのうち里見氏さとみし本姓ほんせい)からましたが、とふのを、わたし自分じぶん取次とりついで、はゝあ、れだな、白樺しらかば支那鞄しなかばん間違まちがへたとふ、名物めいぶつとつさんは、とうなづかれたのが、コツプに油紙あぶらがみふたをしたのに
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
とつさん退かつせい、放さつせい
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
「成る程ね。それにつけても、あんまり詰め込むなよ、毒だぜ。とつさんが、仕入れた蕎麥そばがおしまひになり相で心配して居るぜ」
「いえ、行末は一緒にしたいととつさんが口ぐせに言つて居りましたが、兄さんは何分にも變屈人へんくつじんで、私は恐ろしくて恐ろしくて」
「ハイ、皆んな申上げます。あれは私の兄と申して居りますが、本當はとつさんの一人ツ子で、私は養ひ娘ださうで御座います」
それに狙はれては、藁蘂わらしべの髮を結つた小田原在のとつさん、おへそ接吻キツスさせて置いた財布でも、無事では濟まなかつたでせう。
とつさん、俺は御用聞には相違ないが、此邊は柴井町の友次郎兄哥の繩張りだから、今日はそんな用事で來たんぢやねえ」
「おや、とつさん、この投網が、ひどく損じて居るぢやないか、まだ新しいやうだが、網石の鉛が隨分少くなつて居るが」
「成程、さう言へば狹い家の中よりは、埃つぽい江戸の街中でも、外の方が氣持がよからう、——ところで、あつしに用事といふのは何だえ、とつさん」
とつさん、氣にしないで下さいよ。此野郎は賢こさうな口をきいてゐるが、心が少しばかりりないんだから——」
「斯うなれば、小堀樣の寶物は、伊織樣へお返しするのが順當だ。とつさん、祕傳書と御墨附、出してやつて下さい」
なア、とつさん、——俺に下手人の解つたのは斯う言ふ段取だ。油屋の兼吉が下手人の疑ひを受け、言ひ解きやうが無くなつた時、——本當の下手人は俺を
「又拜むのかいとつさん、わけも言はずに、いきなり拜まれちや、面喰らつてゐるだけだ。わけを話して見ねえ」
現に俺は昨夜ゆうべ一と晩、佐竹の賭場とばに入り込んで、尻の毛までも張つて出たんだ。證人は十人もあるぜ。おい、とつさん、妙な惡名をつけると、唯ぢや置かねえよ
きらねえと、俺は明神樣の氏子で氣がはええ、大木戸の先へケシ飛ばされてから氣が付いちや、遲いぜとつさん
「成程、そんな勘定になるかな——ところで、とつさんは、昨夜ゆうべ、留守番をしてゐたさうぢやないか」
とつさんは隣だからよく知つてゐたことゝ思ふが、殺されたお鮒をうんと怨んでゐた男は誰だえ」
「そんな氣障なんぢやございませんよ。歳こそ十八ですが、玉ちやんはからつきしねんねで、男と聽くと、木戸番のとつさんに聲を掛けられてもイヤな顏をするんですもの」
「有難う、いろ/\面白い話を聽いたよ、——ところでとつさんも、いつまでも獨りで居ちやろくなことは無からう、氣に入つた婆さんでも見付けて、一緒になつたらどうだ」
とつさん、お前の伜の御主人だ。死骸にお目にかゝつて、念佛の一つも上げてくれ」
「よし/\、それでよく解つた。眞夜中に江戸の町を平氣で飛ばせるのは醫者の駕籠くらゐのものだ、——それだけ聽けば見當はつく。ところでとつさん、これからどこへ歸るんだ——」
「物貰ひぢやないぜとつさん、お家の大事つてえものを教へに來たんだ」
「妙なことを訊くがね、とつさん、昨夜の騷ぎを知つて居るだらうな」
「それともお前の家まで送つてやらうか。とつさん家は何處だえ」
「そのわけといふのを聽かうぢやないか。待ちなよとつさん」
とつさん、お前さんは最初から見てゐたんだね」
「それを詮索するのに半日かゝつたよ、とつさん」
「醫者に立ち合つて貰つたかい、とつさん」
「どんな事があつたのだえ、とつさん」
「それは話が違ふだらう、とつさん」
「あツ、おどかすぜ、とつさん」
とつさん、精が出るね」
「なア、とつさん」