爪探つまさぐ)” の例文
塩酸モルヒネ入りのカプセルと一所に左手に持って、薬局用のスリッパを爪探つまさぐった。薬局の横の扉の掛金をはずして、勝手口の外側に出た。
笑う唖女 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
腰掛こしかけあがんで、つき硝子窓がらすまどに、ほねいて凍付いてついてたのが、あわてて、向直むきなほつて、爪探つまさぐりに下駄げたひろつて、外套ぐわいたうしたで、ずるりとゆるんだおびめると、えり引掻合ひつかきあはせるとき
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
全身これ隙のごとく見せかけて、そうそうろうろう、つまずくように、爪探つまさぐるように、ソロソロと歩いて来る——のだが、全身これ剣精けんせい、構えのない構えは刀法の秘粋ひすいである。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
そこで又、しばらくの間フウラリフウラリと躊躇ちゅうちょしていたが、今度はななめに横たおしになって、切っ立った壁をすこしずつ、爪探つまさぐりをしながら登って行った。
一足お先に (新字新仮名) / 夢野久作(著)
われ心に打ちうなづき、薄湿じめりせる石階のほの暗きを爪探つまさぐりて、やゝ五六段ほどくだり行きしと思ふ処に扉とおぼしき板戸あり。その中央に方五寸ほどの玻璃はり板を黒き布にて蔽ひたるがめ込み在り。
白くれない (新字新仮名) / 夢野久作(著)